特定建設業の専任技術者とは?要件と資格を徹底解説

特定建設業の許可取得を目指す事業者にとって、専任技術者の要件を満たすことは、避けては通れない重要なステップです。

専任技術者は、工事現場における技術的な管理だけではありません。

営業所全体の技術面を統括する役割を担います。

今回の記事では、特定建設業の専任技術者について、

  • その役割
  • 満たすべき要件
  • 取得すべき資格

そして具体的な配置基準を詳しく解説します。

当事務所は、建設業許可の専門家として、東京、埼玉、千葉、神奈川の建設事業者様をサポートしています。

特定建設業と一般建設業の違い

建設業許可には、特定建設業と一般建設業の2つの区分があります。

それぞれに異なる基準が定められています。

特に専任技術者の要件は、この区分によって大きく異なります。

特定建設業と一般建設業の概要

  • 一般建設業:発注者から直接請け負った工事について、下請契約の合計金額が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)の工事を行う場合に取得する許可です。
  • 特定建設業:元請として、1件の工事につき下請契約の合計金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を締結する場合に必要となる許可です。

この違いから、特定建設業にはより厳格な財産的基礎と、高い技術的能力が求められます。

専任技術者の役割と違い

一般建設業の専任技術者は、営業所に常勤で設置します。

請負契約の適正な履行を確保するための技術者です。

一方で、特定建設業の専任技術者は、それに加えて、元請として大規模な工事の技術的指導や下請業者への監督を行うための知識と経験が求められます。

そのため、満たすべき要件も厳しくなります。

 

特定建設業の専任技術者要件と資格

特定建設業の専任技術者になるためには、建設業法で定められた特定の要件を満たす必要があります。

この要件は、建設工事の種類によって異なります。

指定建設業とその他の業種

建設工事の業種は、土木一式工事や建築一式工事など、全部で29種類に分類されています。

このうち、特に専門性が高いと判断された7つの業種は「指定建設業」として区別されます。

より厳しい基準が適用されます。

  • 指定建設業:建築工事業、土木工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事、造園工事
  • その他の業種:上記以外の22種類の業種

資格または経験による要件

特定建設業の専任技術者は、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 指定建設業の場合:1級の国家資格者、または技術士の有資格者。
  • その他の業種の場合:1級の国家資格者、技術士の有資格者、または許可を受けようとする業種に関して、指導監督的な実務経験を2年以上含んだ10年以上の実務経験を有する者。

この「指導監督的な実務経験」とは、工事現場の技術面を指導し、下請け業者を監督した経験を指します。

これを証明するには、具体的な業務内容がわかる書類の添付が必要となります。

専任技術者として認められる資格の一例

  • 建築工事業:1級建築施工管理技士、1級建築士
  • 土木工事業:1級土木施工管理技士
  • 電気工事業:1級電気施工管理技士
  • 管工事業:1級管工事施工管理技士
  • 舗装工事:1級土木施工管理技士

 

専任技術者の配置と変更手続き

専任技術者は、営業所に常勤で配置することが義務付けられています。

また、その技術者が退職や異動などで不在となる場合は、速やかに変更手続きを行う必要があります。

専任技術者の常勤性

専任技術者は、原則として、その営業所に常時勤務している必要があります。

  • 非常勤での勤務
  • 他の事業所との兼任

この2つは認められません。

ただし、同一営業所内であれば、複数の業種の専任技術者を兼任することは可能です。

専任技術者の変更手続き

専任技術者が不在になった場合、速やかに新しい専任技術者を確保します。

変更届を行政庁に提出しなければなりません。

この手続きを怠ると、建設業法に違反し、最悪の場合は許可の取り消しにもつながる可能性があります。

 

監理技術者との違いと注意点

特定建設業を請け負う場合、専任技術者とは別に「監理技術者」を工事現場に配置する義務があります。

この2つの役割は混同されやすいため、その違いを理解しておくことが重要です。

監理技術者の役割

監理技術者は、元請として請け負った工事で、下請契約の合計金額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)となる場合に、工事現場に必ず配置しなければならない技術者です。

監理技術者は、現場での施工管理を専門に行い、技術面から工事全体の品質を指導監督する役割を担います。

原則として、1級の国家資格者がなることができます。

主任技術者よりも厳しい要件が課せられます。

専任技術者と監理技術者の関係

専任技術者は営業所に常勤し、監理技術者は工事現場に配置されるという点で、役割が異なります。

ただし、特定の条件を満たせば、同一人物が両方の役割を兼ねることも可能です。

このあたりの判断は、複雑なケースが多く、専門的な知識が必要となります。

疑問点がある場合は、当事務所までご相談ください。

よくある質問と回答

Q1: 特定建設業の専任技術者は、学歴と実務経験でなることはできますか?

A1: はい、指定建設業以外の業種であれば可能です。

ただし、「10年以上の実務経験」に加えて、「指導監督的な実務経験を2年以上」含んでいる必要があります。

この指導監督的な実務経験は、見積書や契約書などの書類で証明する必要があるため、事前の準備が重要です。

指定建設業の場合は、学歴や実務経験だけでは認められず、必ず1級の国家資格が必要です。

Q2: 専任技術者は、複数の会社の専任技術者を兼任できますか?

A2: いいえ、原則として兼任することはできません。

専任技術者は「その営業所に常勤して専らその業務に従事する者」と定められています。

同一人物が複数の会社の専任技術者を兼任することは、この常勤性を満たさないため、認められません。

Q3: 経営業務の管理責任者と専任技術者は、同一人物でもいいですか?

A3: はい、可能です。

経営業務の管理責任者と専任技術者の要件を両方満たしている場合は、同一人物が両方を兼任できます。

特に中小規模の建設会社では、代表者が両方を兼ねるケースが多く見られます。

ただし、それぞれの要件を正確に満たしているかの判断は専門的な知識が必要なため、専門家への相談をおすすめします。

Q4: 専任技術者が急に退職した場合、どうなりますか?

A4: 専任技術者が退職した場合、その営業所は要件を満たさない状態になります。

この場合、30日以内に後任の専任技術者を確保し、行政庁に届出を行う義務があります。

この期間内に後任が見つからない場合、許可が取り消される可能性があります。

Q5: 専任技術者の要件を満たすために、講習を受ければよいですか?

A5: 講習を受けることで資格を取得できるものもありますが、専任技術者の要件を満たすためには、原則として国家資格や実務経験が必要です。

国土交通大臣の認定講習や学歴に応じて、実務経験の年数が短縮されるケースはありますが、それだけで要件を満たすことはできません。

まとめ

特定建設業の専任技術者は、一般建設業よりも厳しい要件が求められます。

特に、指定建設業の業種では、1級の国家資格者が必須となります。

許可の取得後も、

  • 専任技術者の常勤
  • 変更届の提出

など、建設業法に基づく義務を履行しなければなりません。

これらの複雑な制度を理解し、適切な手続きを行うことは、事業者の皆様にとって大きな負担となります。

建設業許可を専門に取り扱う行政書士に依頼することで、手間と時間を大幅に削減しませんか?

確実な許可の取得と維持が可能になります。

当事務所では、特定建設業許可の取得から更新、各種手続きまで、トータルでサポートしています。

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