特定建設業の取得ガイド|要件、メリット、申請から費用まで徹底解説

建設業許可には、一般建設業と特定建設業の2つの区分があります。

特に、大規模な工事を請け負う場合、元請として4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上の下請契約を締結する際には、特定建設業の許可が必要となります。

この許可を取得することは、事業規模を拡大し、公共工事や大規模な民間工事への参加資格を得る上で不可欠なステップです。

今回の記事では、特定建設業の取得を検討している皆様に向けて、

  • 要件
  • 申請の流れ
  • 必要な書類
  • 費用
  • メリット・デメリット

まで網羅的に解説します。

当事務所は、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアを中心に、特定建設業の申請を専門とする行政書士として、皆様の課題を解決し、円滑な許可をサポートします。

特定建設業許可の取得要件

特定建設業の許可を取得するためには、一般建設業と比べてより厳格な要件を満たさなければなりません。

特に、財産的基礎と技術者の要件は大きなハードルとなります。

財産的基礎の要件

特定建設業の許可は、下請負人を保護する目的から、元請となる建設業者に対して、健全な経営を維持するための十分な財産を求めています。

以下の4つのすべてを満たす必要があります。

  • 資本金が2,000万円以上であること
  • 自己資本の額が4,000万円以上であること
  • 流動比率が75%以上であること(流動資産÷流動負債)
  • 欠損の額が資本金の20%を超えないこと

この要件は、直前の決算書を基に審査が行われます。

もし、これらの基準を満たさない場合は、増資や財務状況の改善といった対策を講じる必要があります。

当事務所は、お客様の財務諸表を分析し、許可を取得できるよう最適な方法をご提案します。

建設業許可の財産的要件とは?自己資本500万円の基準と証明方法を解説

専任技術者の要件

特定建設業の場合、営業所ごとに設置する専任技術者は、一般建設業よりも厳しい資格や経験が必要となります。

建設工事の種類ごとに、以下のいずれかを満たす者を置かなければなりません。

  • 指定建設業の場合:1級の国家資格(例:1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士、1級電気工事施工管理技士など)を有する者
  • 指定建設業以外の場合:1級の国家資格または、特定の業種に係る実務経験(指導監督的な実務経験を2年以上含む)がある者

この専任技術者の要件を満たすことは、円滑な許可申請に不可欠な事項です。

特定建設業許可のメリットとデメリット

特定建設業の許可を取得することは、事業の成長に不可欠なステップです。

しかし、そのメリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。

メリット

  • 事業規模の拡大:4,000万円を超える下請契約が可能になり、大規模な工事を受注できるようになります。このことは、企業の成長と収益の増加に直結します。
  • 対外的な信用力の向上:厳格な要件をクリアした証として、金融機関や発注者からの信頼を得やすくなります。公共工事の入札にも有利になります。
  • 下請業者との信頼関係構築:特定建設業の許可は、下請業者への配慮を義務付けるものでもあり、適正な取引を行うことで、下請業者との長期的な信頼関係を築くことができます。

デメリット

  • 厳しい要件:特に、財産的要件は厳格であり、常に高い水準で維持する必要があります。財務管理に注意を払う必要があり、場合によっては増資などの手続きが必要となります。
  • ランニングコスト:一般建設業よりも厳しい基準の技術者を確保する必要があり、人件費などが増加する可能性があります。
  • 複雑な申請:一般建設業に比べて必要な書類が多く、手続きが複雑になります。自社で行うと、多くの時間と労力がかかります。

 

特定建設業許可の申請と費用

特定建設業の申請は、その要件の厳しさから、事前にしっかりと準備を進めておくことが重要です。

申請のステップ

申請の流れは以下のステップで進めます。

  1. 要件の確認:まずは、財産的要件や技術者の要件など、特定建設業の取得に該当するかどうかを厳格に確認します。
  2. 書類の収集:法人の登記事項証明書、役員の身分証明書、財務諸表、技術者の資格証など、多くの書類を収集します。
  3. 申請書の作成:収集した書類を基に、申請書や各種添付書類を作成します。内容に虚偽や不備がないよう、細心の注意を払う必要があります。
  4. 提出と審査:作成した申請書類を、営業所の管轄である都道府県知事、または国土交通大臣に提出します。申請後、行政庁の審査が始まります。

申請から許可が下りるまでの期間は、管轄する行政庁によって異なります。

一般的には約1ヶ月から2ヶ月程度が目安です。

ただし、書類に不備があった場合は審査期間が延長されることがあるため、事前の準備が非常に重要となります。

特定建設業許可の費用

特定建設業の取得には、行政庁に支払う法定手数料と、行政書士に依頼する場合の報酬があります。

法定手数料は、新規取得の場合で15万円(知事許可)または18万円(大臣許可)となります。

行政書士の報酬は事務所によって異なりますが、一般的に30万円から50万円程度が相場です。

行政書士に依頼するメリット

行政書士に依頼することで、自社で申請するよりも遥かに効率的かつ確実な許可取得を目指すことができます。

  • 専門的な知識と経験:建設業許可の専門家である行政書士は、最新の法令や行政庁ごとの運用実態に精通しています。複雑な要件や書類作成のポイントを熟知しているため、スムーズに手続きを進めることができます。
  • 時間の節約:煩雑な書類の収集や作成、申請窓口への提出といった手続きをすべて代行してもらえます。そのため、経営者や担当者が本来の業務に集中できます。
  • ミスの防止:書類の不備や記載漏れは、審査期間の長期化や不許可につながることがあります。行政書士は書類を正確に作成するため、こうしたリスクを最小限に抑えることができます。
  • 総合的なサポート:許可申請だけでなく、事業承継や各種変更届、経営事項審査など、許可取得後も継続的にサポートを受けることができます。

 

よくある質問と回答

Q1: 特定建設業許可は、すべての業種で取得できるのですか?

A1: 特定建設業の許可は、建設工事の種類ごとに取得します。

たとえば、

  • 土木一式工事
  • 建築一式工事
  • 電気工事

など、それぞれの業種について要件を満たし、個別に申請を行う必要があります。

一般建設業と同様に、複数の業種を一度に申請することも可能です。

Q2: 一般建設業と特定建設業を同時に取得できますか?

A2: はい、可能です。

同じ業種について一般と特定を同時に取得することはできませんが、異なる業種であれば、一方は一般、もう一方は特定という形で同時に取得することができます。

たとえば、

  • 土木一式工事は特定建設業
  • 内装仕上工事は一般建設業

といったケースが考えられます。

Q3: 特定建設業の許可を取得すると、一般建設業の許可は不要になりますか?

A3: いいえ、必ずしも不要になるわけではありません。

特定建設業の許可は、大規模な下請契約を行う場合に必要となります。

しかし、一般建設業の許可が必要な小規模な工事も請け負うことができます。

ただし、特定建設業の許可を保有していれば、金額の上限なく元請として下請契約を締結できます。

よって、一般建設業の許可は実務上、必要なくなることが多いです。

Q4: 特定建設業の財産的要件にある「自己資本」とは、具体的に何を指しますか?

A4: 自己資本とは、法人の場合、貸借対照表の「純資産の部」の合計額を指します。

  • 資本金
  • 資本剰余金
  • 利益剰余金

などが含まれます。自己資本がマイナス(債務超過)になっている場合は、許可要件を満たしていません。

よって、増資や資産売却などによる改善が必須となります。

Q5: 監理技術者の要件にある「指導監督的な実務経験」とは、どういうものですか?

A5: 指導監督的な実務経験とは、工事現場における技術的な管理業務に加え、下請けの技術者や作業員を指導・監督した経験を指します。

具体的には、

  • 工事の工程管理
  • 品質管理
  • 安全管理

など、工事全体を統括する立場での業務経験がこれに該当します。

この経験を証明するためには、工事の契約書や施工管理台帳、職務内容を証明する書類などが必要となります。

 

許可取得後の義務と注意点

特定建設業の許可を取得した後も、建設業法で定められた義務を履行する必要があります。

これらの義務を怠ると、許可が取り消されたり、行政処分を受ける可能性もあります。

監理技術者と主任技術者の違い

特定建設業の大きな特徴の一つは、工事現場に「監理技術者」を配置する義務があることです。

一般建設業の現場で配置される「主任技術者」よりも厳しい要件を満たす者を配置しなければなりません。

  • 主任技術者:原則としてすべての工事に配置が必要。建設工事の種類ごとに、一定の実務経験や国家資格が必要。
  • 監理技術者:発注者から直接請け負った工事で、下請に出す請負金額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円)の場合に配置が必須。原則として1級の国家資格(建築士、施工管理技士など)を有する者。

この技術者の配置は、法律で厳しく定められているため、常に注意が必要です。

許可更新と各種変更届

特定建設業の許可は、5年ごとに更新の手続きが必要です。

また、

  • 会社の名称
  • 所在地
  • 役員の変更
  • 営業所の新設

など、登録事項に変更が生じた場合は、速やかに変更届を提出する義務があります。

 

特定建設業の相談とサポート

特定建設業の取得は、事業の成長に不可欠なステップです。

しかし、その複雑な要件や手続きに戸惑う方も多いでしょう。

専門家である行政書士に相談することで、これらの課題をスムーズに解決できます。

当事務所のサポート

当事務所は、建設業許可の専門家として、特定建設業の申請にも豊富な実績があります。

お客様の状況を丁寧にヒアリングし、許可が取れるかどうか判断から、

  • 必要な書類の収集
  • 申請

まですべて代行します。

  • 「要件を満たしているかわからない」
  • 「どの手続きから始めればいいか悩んでいる」

という方は、ぜひ一度お問い合わせください。

東京、埼玉、千葉、神奈川の事業者様のご依頼に対応しています。

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