特定建設業許可とは?一般建設業との違いや要件、申請を徹底解説
建設業の許可には、一般建設業と特定建設業の2つの区分があります。
特に、元請として4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の下請契約を締結する際には、特定建設業の許可が必要となります。
この許可を取得することは、事業の規模を拡大していく上で非常に重要な手続きです。
今回の記事では、特定建設業の許可に関する情報を解説します。
- 一般建設業との違い
- 取得に必要な厳しい要件
- 申請の流れ
- 許可後に求められる義務
まで、一つずつ分かりやすく説明します。
当事務所は、建設業の許可申請を専門とする行政書士として、皆様の課題を解決し、事業の成長をサポートします。
一般建設業との違いを比較
特定建設業は、一般建設業に比べてより厳格な要件が求められます。
この違いを理解することが、どちらの許可が自社に該当するかを判断する上で重要です。
請負金額の制限
建設業法では、元請として工事を請け負う場合に、下請に出せる請負金額の総額によって許可の区分を定めています。
一般建設業では、1件の工事で300万円(税込)以上の金額の下請契約を締結することはできません。
一方で、特定建設業は、この下請契約の金額に制限がありません。
具体的な金額は以下のとおりです。
- 一般建設業:請負代金の額に関わらず、4,000万円(建築一式工事は6,000万円)未満の下請契約に制限
- 特定建設業:4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上の下請契約を締結する場合に必要
財産的要件の厳格化
特定建設業の取得には、一般建設業と比べて非常に厳しい財産的要件が求められます。
これは、下請業者を保護するために定められたもので、元請が経営難に陥った際のリスクを軽減する目的があります。
具体的な要件は以下の4つです。
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
- 流動比率が75%以上であること
- 欠損の額が資本金の20%を超えないこと
この要件は、決算書を基に審査が行われます。
自己資本や資本金が不足している場合は、増資などの手続きを行う必要があります。
専任技術者の違い
建設工事の現場に配置する専任技術者の要件にも違いがあります。
- 一般建設業:10年の実務経験や指定の国家資格を有する者を配置
- 特定建設業:より高い技術レベルが求められ、特定の国家資格(1級施工管理技士など)や、2年の指導監督的な実務経験が必要となります。特定建設業の現場では監理技術者を配置する義務があります。
特定建設業許可のメリットとデメリット
特定建設業の許可を取得することは、事業の成長に不可欠ですが、そのメリットとデメリットを正しく理解しておくことが大切です。
メリット
- 事業規模の拡大:4,000万円を超える下請契約が可能になります。大規模な工事を受注できるようになります。
- 対外的な信用力の向上:厳格な要件をクリアした証として、金融機関や発注者からの信頼を得やすくなります。公共工事の入札にも有利になります。
- 請負工事の幅が広がる:他の業者とジョイントベンチャー(JV)を組む際にも、特定建設業の許可が必要となるケースがあります。より多くの案件に参加できるようになります。
デメリット
- 厳しい財産的要件:自己資本の額や流動比率を常に高い水準で維持する必要があります。財務管理に注意を払う必要があります。
- ランニングコスト:一般建設業よりも厳しい基準の専任技術者や監理技術者を確保する必要があります。人件費などが増加する可能性があります。
- 複雑な申請手続き:一般建設業に比べて必要な書類が多く、申請手続きが複雑になります。自社で行うと非常に多くの時間がかかります。専門家への依頼がおすすめです。
特定建設業許可の申請方法
特定建設業の許可申請は、その要件の厳しさから、事前にしっかりと準備を進めておくことが重要です。
申請の前に
申請の前に、自社が特定建設業の要件を満たしているかどうかを厳格に確認しましょう。
特に、財産的基礎や専任技術者の要件は専門的な知識が必要です。
決算書を用意します。
- 過去の請負契約書
- 施工管理台帳
など、実績を証明する資料を整理しておきましょう。
申請書類と提出先
申請書類は多岐にわたります。
- 法人の登記事項証明書
- 役員の身分証明書
- 財務諸表
- 技術者の資格証
など、多くの書類が必要です。
提出先は、建設業を営む営業所が所在する都道府県知事、または複数の都道府県にある場合は国土交通大臣となります。
許可取得後の具体的な流れと注意点
特定建設業の許可を取得することはゴールではなく、事業拡大に向けた新たなスタート地点です。
許可後には、特に経営事項審査や公共工事の入札参加資格、そして法令に基づく義務の履行が重要となります。
経営事項審査と公共工事入札
特定建設業の許可を取得すると、公共工事の入札に参加する際に必要な「経営事項審査(経審)」を受けることが可能になります。
経審は、
- 会社の財務状況
- 技術者の数
- 完成工事高
などを総合的に評価し、点数化するものです。
この点数(客観的評価点)が高ければ高いほど、公共工事の受注機会が広がります。
技術者配置と下請指導
特定建設業者は、4,000万円以上の下請契約を締結する際、建設業法で定められた技術者を現場に配置する義務があります。
主任技術者ではありません。
より上位の資格を持つ「監理技術者」を配置する必要があります。
また、下請け業者への指導や監督にも責任を持つ立場となるため、適正な契約書の作成や代金の支払いなど、法令遵守が厳しく求められます。
契約書作成の義務と注意点
特定建設業者は、下請業者との間で締結する請負契約について、書面による契約書を必ず作成する義務があります。
これは、下請業者の保護を目的として建設業法に規定された事項です。
契約書には、
- 工事内容
- 請負代金の額
- 支払い時期
- 工事着手および完成時期
など、法定された事項を漏れなく記載する必要があります。
これらの記載事項に不備があった場合、行政処分を受ける可能性があります。
当事務所では、こうした契約書作成に関する法務相談も専門的に承っています。
特定建設業の相談とまとめ
特定建設業の許可取得は、事業の成長に不可欠なステップです。
しかし、その複雑な要件や手続きに戸惑う方も多いでしょう。
専門家である行政書士に相談することで、これらの課題をスムーズに解決できます。
当事務所への依頼
当事務所は、建設業許可を専門としております。
特定建設業の申請にも豊富な実績があります。
お客様の状況を丁寧にヒアリングしております。
- 許可が取れるかどうかの判断
- 必要な書類の作成
- 申請
まですべて代行します。
- 「要件を満たしているかわからない」
- 「どの手続きから始めればいいか悩んでいる」
という方は、ぜひ一度お問い合わせください。
許可後の義務と注意点
特定建設業の許可を取得した後も、建設業法で定められた義務を履行する必要があります。
- 毎年の決算変更届
- 現場ごとの主任技術者・監理技術者の適正な配置
など、許可を維持していくための手続きや注意点も多数存在します。
当事務所は、許可を取得した後も、事業者様の継続的な法務をサポートします。
行政書士との継続的な関係の重要性
建設業許可は、取得したら終わりではありません。
5年ごとの更新手続きはもちろんのこと、会社の役員変更や営業所の移転など、様々な変更が生じるたびに行政庁への届出が義務付けられています。
これらの手続きを怠ると、最悪の場合、許可の取り消しにつながる可能性もあります。
そのため、許可を取得した後も、専門的な知識を持つ行政書士と継続的に連携し、適切な法務管理体制を築いておくことが非常に重要です。