建設業許可の支配人変更とは?要件や変更手続きの必要書類、期限を行政書士が解説

建設業を営む法人や個人事業主にとって、建設業許可の維持は事業の継続に欠かせない最優先事項です。
その中で、営業所に配置される支配人の交代が発生した際、どのような手続きが必要か不安を感じていませんか?
支配人は、建設業法施行令第3条の使用人と同様、代表者に代わってその営業所の業務一切を裁判外・裁判上で行う権限を有する非常に重要なポストです。
そのため、新任の就任や退任などの事実が生じた場合は、法務局での登記だけではありません。
行政庁(知事や大臣)への変更届の提出が義務付けられています。
本記事では、東京、埼玉、千葉、神奈川の全域で建設業許可申請や更新、変更手続きを専門に行う行政書士が、
- 支配人の定義
- 変更の流れ
- 期限
- 欠格事由
- 実務上の注意点
までを詳しく解説します。
適切な届け出を怠ってしまうと、罰則や許可取り消しのリスクも残ります。
ぜひ最後までお読みください。
建設業許可 支配人とは
結論:建設業許可における支配人とは、会社法に基づき、本店または支店(営業所)において事業に関する一切の行為をなす権限を与えられた者のことで、登記が必須となる役職です。
建設業法上では「令第3条の使用人」としての側面を持ちます。
経営管理の経験や誠実性が厳しく審査されます。
1. 支配人の法的な役割と権限
一般的に店長や所長と呼ばれる職種の中でも、特に強い権限を持つのが支配人です。
建設業法第12条および施行規則に基づき、その地位は確立されています。
支配人の権限の内容:その営業所の業務に関し、代表取締役に代わって契約の締結、入札、見積、雇用、代金の請求といった一切を行うことができます。
これは単なる肩書きではなく、法律上の包括的な代理権を意味します。
登記簿への記載:株式会社などの法人の場合、法務局にて支配人の選任としての商業登記が行われていることが前提となります。
この登記があることで、第三者に対しても「この人物は営業所の責任者である」という正当な権限を証明できます。
令3条使用人との違い:建設業法上の令3条の使用人には、登記のない支店長や営業所長も含まれることがあります。
しかし、登記された支配人はより厳格な社会的責任を負うため、公共工事の入札参加資格審査(経審)などにおいて、重要な評価対象となることがあります。
2. 支配人に求められる具体的な要件
新たに支配人を設置・変更する際には、単に選任するだけでなく、以下の厳しい要件を満たす必要があります。
常勤性:その営業所に常勤し、実質的に管理を行っていることが大前提です。
これは
- 健康保険被保険者証の写し
- 給与明細
- 通勤実態
などで確認されます。
他社の役員を兼ねている場合や、あまりに遠方に住んでいる場合は常勤性が疑われるため注意が必要です。
欠格事由への不該当:建設業法第8条に定める欠格要件(破産者で復権を得ない者、暴力団関係者、過去5年以内に建設業法違反で罰金以上の刑を受けた者など)に該当しないことが絶対条件です。
これは身分証明書や登記されていないことの証明書を提出することで証明します。
経営業務の管理責任者(経管)としての適格性:支配人は、その営業所における経営責任を一任されるため、多くの場合、経営管理の経験が求められます。
特に支店で許可を維持する場合、支配人がその支店の責任者として適切であるか、過去の略歴書に基づき厳査されます。
建設業許可 変更手続きの全体像
結論:支配人の変更が発生した場合、まずは法務局で変更登記を完了させ、その後、30日以内に行政庁(東京都知事、神奈川県知事など)へ変更届を提出しなければなりません。
提出を忘れると、次回の更新や業種追加の際に補正を求められ、手続きがストップしてしまいます。
1. 支配人変更から完了までのステップ
変更の事実が発生してから届け出が完了するまでの実務的な手順は以下のとおりです。
ステップ1:社内決定と議事録作成 取締役会や株主総会、あるいは代表者の決定により、新任支配人の選任、または現支配人の退任を決定します。
この際の決定内容を証する議事録は、後の登記や変更届の裏付けとなります。
ステップ2:法務局への変更登記申請 支配人は登記が義務付けられているため、選任から2週間以内に管轄の法務局へ登記申請を行います。
司法書士に依頼するか、自社で進めます。
登録免許税として3万円が必要です。
ステップ3:証明書類の収集 登記が完了したら、新しい内容が反映された履歴事項全部証明書を取得します。
同時に、新支配人の住民票、身分証明書、登記されていないことの証明書を各役所で収集します。
ステップ4:変更届(様式第22号の2)の作成 建設業許可専用の様式に従い、変更届を作成します。
略歴書(様式第11号)には、過去10年以上の職歴を詳しく記載し、経営経験に齟齬がないか確認します。
ステップ5:行政庁への提出と受理 東京なら都庁、神奈川なら県庁の建設業課などへ書類を持ち込むか、現在は電子申請システムを活用して提出します。
受理印が押された副本(控え)は、許可の維持を証明する重要な資料として保管します。
2. 変更届の提出期限と遅延時のリスク
建設業法第12条に基づき、変更があった日から30日以内に提出しなければなりません。
30日のカウント方法:就任日または退任日が起算日となります。登記完了日ではなく、あくまで事実が発生した日から30日ですので、法務局の処理待ちで期限を過ぎないよう、事前の準備が重要です。
期限を過ぎた場合:30日を超えてしまったからといって、変更届が受理されないわけではありません。
しかし、行政庁によっては始末書の提出を求められたり、悪質な遅延とみなされると6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金といった罰則の対象となる可能性があります。
更新申請への影響:更新申請の直前にまとめて変更届を出そうとすると、審査が大幅に遅れたり、最悪の場合は有効期間内に更新が完了せず、許可が失効するリスクがあります。
変更は都度、速やかに行うのが鉄則です。
3. 手続きにかかる費用の内訳
手続きに際して発生する実費と外部費用の目安です。
- 登録免許税:30,000円(登記用)
- 履歴事項全部証明書:600円
- 住民票・身分証明書等:各300円〜500円
- 行政書士報酬:30,000円〜50,000円程度(消費税別)
合計すると、自社で行う場合でも3万数千円
行政書士に依頼する場合は7万円〜9万円程度を見込んでおくのが一般的です。
建設業許可 支配人 変更の必要書類
結論:支配人の変更(新設・交代・退任)には、氏名や略歴を証明する書類のほか、欠格要件に該当しないことを示す誓約書など、複数の添付書類が必要です。
個人のプライバシーに関わる資料も含むため、取り扱いには細心の注意が必要です。
1. 基本となる申請書類
様式第22号の2(変更届出書):届出のメインとなる書類です。
様式第11号(略歴書):新任支配人の学歴、職歴、賞罰の有無を詳細に記します。
特に建設業に関連する経験は、後の経営管理責任者の要件確認にもつながるため、正確性が求められます。
様式第6号(誓約書):法第8条に規定する欠格要件に該当しないことを、本人および法人が誓約します。
2. 本人確認および適格性を証明する書類
以下の公的書類は、通常、発行から3ヶ月以内のものを用意します。
住民票(または個人番号カードの写し):住所の変更がある場合や、本人確認のために必要です。
身分証明書:本籍地の市区町村が発行するもので、破産手続の開始決定を受けていないことなどを証明します。
登記されていないことの証明書:成年被後見人、被保佐人として登記されていないことを法務局が証明します。
履歴事項全部証明書:法人の登記簿謄本です。支配人の登記が完了していることを確認するために必須です。
3. 常勤性を裏付ける資料(提示または添付)
行政庁によって運用が異なりますが、概ね以下のいずれかが求められます。
健康保険被保険者証の写し:事業所名が記載されているもの。
雇用保険被保険者決定通知書の写し:新たに雇用した支配人の場合。
確定申告書の写し:給与の支払い実態を確認するため。
住民票(通勤圏内であることの確認):あまりに遠方の場合は、新幹線通勤の領収書や定期券の写しを求められることもあります。
建設業許可 役員変更との違いと注意点
結論:役員変更は会社全体の経営陣の入れ替えであり、支配人の変更は特定の営業所における責任者の入れ替えです。
どちらも建設業法上の届け出が必要ですが、対象となる事由や、管理責任者との兼ね合いにおいて具体的なチェックポイントが異なります。
1. 建設業許可 役員変更(取締役等の交代)
対象:代表取締役、取締役(常勤・非常勤問わず)、執行役員、監査役。
登記の有無:すべての役員変更は商業登記が必要です。
届け出期限:事実発生から30日以内。
審査のポイント:役員全員が欠格要件に該当していないかが厳しく見られます。
一人の役員が刑罰を受けるだけで、会社全体の許可が取り消されるという連鎖反応(欠格要件の連鎖)があるため、非常に慎重な人事管理が求められます。
2. 支配人変更における特有の留意事項
営業所ごとの責任:支配人は営業所ごとに置かれるため、支店が複数ある会社では「どの支店の支配人が変わったのか」を明確に区別して届け出る必要があります。
管理責任者・専任技術者との兼務:これが実務上もっとも多いトラブルの原因です。
支配人が専任技術者を兼ねている場合、専任技術者の変更届も同時に出す必要があります。
専任技術者の変更期限は2週間以内と、支配人の30日よりも短いため、早い方に合わせなければなりません。
支配人が交代するということは、その営業所の経営責任者が変わることを意味します。
そのため、新しい支配人が経営管理の経験要件を満たしているか、許可の維持に支障がないかを事前に精査しなければなりません。
3. 改姓・改名に伴う届け出
意外と忘れがちなのが、結婚や養子縁組等による支配人の氏名の変更です。
内容:支配人そのものが交代しなくても、氏名が変われば変更届の対象です。
必要書類:戸籍抄本、または裏面記載のある運転免許証の写しなど。
期限:同様に30日以内です。登記も変更が必要ですので、法務局とセットでの対応となります。
東京・埼玉・千葉・神奈川のローカルルール解説
結論:建設業許可の運用は、国土交通省のガイドラインに基づきつつも、各都道府県の窓口ごとに細かなローカルルールが存在します。
一都三県で事業を展開する業者様は、提出先の特色を理解しておく必要があります。
1. 東京都(都庁)の運用の特色
東京都は申請件数が日本一多く、審査が非常にシステム化されています。
電子申請の推奨:原則として建設業許可管理システム(JCIP)によるオンライン申請が強く推奨されています。
常勤性の確認:社会保険への加入状況がリアルタイムでチェックされる体制が整っており、未加入状態での支配人就任は厳しく指導されます。
予約制の廃止:以前は窓口予約が大変でしたが、現在は郵送または電子申請が主軸となっています。
2. 神奈川県(県庁)の運用の特色
神奈川県は、実務経験の証明書類や常勤性の確認において、他県よりも現物確認を重視する傾向があります。
対面審査の価値:横浜の窓口では、ベテランの相談員による丁寧な書類チェックが行われます。不備があるとその場で細かく指摘されるため、事前の完璧な書類準備が求められます。 支配人の経歴:過去の略歴書と現在の申請内容に矛盾がないか、過去の控えを遡って確認されるケースがあります。
3. 埼玉県・千葉県の運用の特色
埼玉県、千葉県では、地域密着型の建設業者が多いため、営業所の実態確認(写真撮影や図面提出)を求められることが他県より多い傾向にあります。
営業所の実態:支配人が交代する際、営業所の所在地や電話番号に変更がないか、看板が適切に設置されているかなどの写真を改めて求められることがあります。
地域区分:千葉県では管轄の土木事務所ごとに受付を行う形式が残っており、提出先の事務所を間違えないよう注意が必要です。
建設業許可 支配人 要件と実務の落とし穴
結論:支配人の変更手続きを自社で行おうとすると、思わぬところで「落とし穴」にはまることがあります。
特に経験不足の新任支配人を立ててしまうと、許可そのものが危うくなる可能性があります。
1. 経営業務の管理責任者としての要件不足
支配人は営業所の長として、経営管理責任者(またはそれに準ずる地位)としての経験が問われます。
5年以上の経営経験:法人の役員や個人事業主としての経験が必要です。 6年以上の補佐経験:役員に次ぐ地位での経験。
もし新支配人がこれらの経験を証明できない場合、その営業所で特定の工事の請負契約を結ぶことができなくなったり、知事許可から一般へのランクダウンを余儀なくされるケースがあります。
2. 専任技術者の空白期間
支配人と専任技術者を同一人物が兼ねている場合、交代のタイミングで1日でも「技術者がいない日」が生じると、その瞬間に許可要件を欠いたことになります。
同日付での交代:旧支配人の退任と新支配人の就任を、登記上も変更届上も同日付(空白なし)で行うことが実務上の鉄則です。
3. 社会保険・雇用保険の未加入
近年の法改正により、社会保険への適切な加入は建設業許可の必須要件となりました。
新支配人が社会保険に加入していない:変更届を出した際、保険の加入証明(標準報酬決定通知書など)が出せないと、是正勧告を受け、従わない場合は許可の取り消しもあり得ます。
建設業許可を行政書士に依頼するメリット
結論:支配人の変更は、単なる氏名の書き換えではなく、
- 要件の再確認
- 登記との整合性
- 他の資格者(技術者等)との兼務状況
を総合的に判断する実務です。
専門家である行政書士に依頼することで、不備による差し戻しや期限切れのリスクを最小化できます。
1. 専門行政書士によるフルサポートの内容
行政書士法人と連携し、東京・神奈川・埼玉・千葉の一都三県でスピーディーに対応します。
事前診断サービス:新しい支配人の略歴を確認し、許可要件を満たすか、将来の更新に支障がないかを無料で診断します。
公的書類の職権請求:身分証明書や登記されていないことの証明書など、平日に役所へ行く必要がある書類を代行して取得します。
他資格との調整:専任技術者や管理建築士など、他の資格との兼ね合いをすべて整理し、漏れのないパッケージで変更届を作成します。
2. 依頼から完了までの安心スケジュール
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無料相談:お電話またはフォームから気軽にご連絡ください。現状のヒアリングを行います。
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お見積りとご契約:明確な料金体系をご提示します。追加料金は一切ありません。
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登記・書類準備:提携司法書士と連携し、登記から書類収集までを一気に行います。
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申請代行:行政庁へ変更届を提出し、受理された副本をお客様へお届けします。
よくある質問
支配人の変更に関して、事業者様からよくいただく質問をまとめました。
Q1. 支配人の住所だけが変わった場合も届出は必要ですか?
A. はい、必要です。支配人の住所や氏名の変更は建設業法施行令第3条に規定されており、変更から30日以内に届け出なければなりません。
この場合、住民票などの証明書が必要です。
Q2. 登記を忘れて30日を過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
A. 過ぎてしまった場合でも、速やかに変更登記を行い、行政庁へ変更届を提出してください。
始末書の提出を求められることがありますが、そのままにしておくことが最も危険です。
放置すると「虚偽記載」や「届出怠慢」として、今後の入札参加や更新に重大なペナルティが課される可能性があります。
早めに行政書士へご相談ください。
Q3. 支配人を置くメリットは何ですか?
A. 遠隔地の支店において、いちいち本店の代表印を使わずに契約行為ができるようになり、業務の効率化が図れます。また、公共工事の入札において、支店長としての実績を積むことができます。会社全体のガバナンスを強化し、各支店の責任を明確にする上でも有効な手段です。
Q4. 外国人を支配人にすることは可能ですか?
A. 可能です。ただし、適切な在留資格(経営・管理など)を有していることや、日本の法制度における欠格事由に該当しないことを証明するための書類(宣誓供述書など)が別途必要になる場合があります。
Q5. 支配人が死亡してしまった場合はどうすればいいですか?
A. 死亡した日から30日以内に「退任」としての変更届を提出する必要があります。
後任が決まっていない場合は、一旦支配人を空席にする登記と届け出を行い、後日改めて選任することになります。
建設業許可 支配人 変更のご相談は当事務所へ
建設業許可の支配人変更は、業者様にとって重要な節目です。
要件の確認から書類の作成、提出まで、一つでも不明な点があれば、建設業の実務に精通した専門家を頼るのが最短ルートです。
当事務所では、2025年以降の最新の改正やガイドラインに基づき、適切なアドバイスを提供します。
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佐藤栄作行政書士事務所 |
公開日:2025.12.14 08:30
更新日:2025.12.14 09:25



