建設業許可の使用人の変更は建設業法の義務!第12条と令第3条の届出を解説

建設業許可を取得し、建設業を営む上で、「使用人」の存在は非常に重要です。
特に、本店以外の各営業所において、契約締結の権限を持つ「支店長」や「支配人」などは、建設業法上の「使用人」に該当します。
建設業法では、この「使用人」に関する事項に変更が生じた場合、必ず行政庁への「変更届」の提出が義務付けられています(建設業法第12条、施行令第3条)。
この届出を怠ると、建設業の「欠格要件」に抵触する可能性や、将来的な公共工事の入札参加資格審査(経営事項審査)に影響を与える重大な問題に発展しかねません。
当記事は、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアの建設業許可申請を専門とする行政書士事務所として、
- 「使用人の変更」に関する建設業法上の義務
- 具体的な手続きの流れ
- 必要な書類
- 提出期限
そしてよくある疑問と解決策を網羅的に解説します。
許可の維持と法令遵守のため、経営者様やご担当者様はぜひご一読ください。
建設業許可 使用人変更の概要
結論:建設業法第12条および施行令第3条に基づき、建設業の各営業所において、請負契約の締結権限を持つ「使用人」(支店長、支配人等)に関する事項に変更が生じた場合は、所定の期限内に変更届を提出する義務があります。
この届出は、建設業者の法令遵守状況を示す重要な手続きです。
1. 建設業法上の「使用人」の定義と範囲
建設業法における「使用人」とは、単に一般的な従業員を指すのではなく、以下の者を指します。
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支配人:会社法に基づき登記された者で、本店又は支店の事業の一部について、全ての裁判上及び裁判外の行為をなす権限を有する者。
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支店長・営業所長:本店以外の建設工事に関する請負契約を締結する権限を与えられた各営業所の代表者。
変更届の対象となるのは、主たる営業所(本店)を除く、常に請負契約を締結する実態を持つ各営業所の長です。
単なる現場の所長や、契約権限を持たない事務所の長は該当しません。
2. 変更届が義務化されている根拠
建設業の許可は、業者の信頼性(誠実性、欠格要件の不該当)に基づいて与えられるものです。
契約権限を持つ使用人の交代は、その営業所の信頼性に直接影響を与えるため、法令で届出が義務付けられています。
建設業法第12条(変更の届出)
「許可を受けた建設業者は、国土交通省令の定める事項に変更があったときは、その変更があった日から30日以内に、その旨を国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。」
建設業法施行令第3条(届出を要する事項)
この施行令第3条において、届出を要する事項の一つとして、「建設業の営業所の使用人の氏名」が定められています。
従って、
- 使用人の選任(新たな営業所の設置に伴う場合を含む)
- 解任(退職、異動)
- 氏名や住所の変更
はすべて届出の対象となります。
3. 「使用人」が兼ねる役割と重要性の増加
現在、建設業者の事業規模の拡大に伴い、多くの場合で使用人は専任技術者や建設業法上の「管理責任者」などを兼任しています。このような兼任の状況で使用人の変更が生じた場合は、単に氏名の変更届だけではなく、専任技術者の交代や、役員の変更など、複数の届出を併せて行う必要があり、手続きは一層複雑になります。
建設業法 使用人変更手続きの流れと期限
結論:使用人の変更届の提出は、原則として変更があった日から30日以内に行う必要があります。
手続きは、必要な様式(主に様式第7号)を記載し、新旧の使用人に関する証明書類を添付して、許可を受けた行政庁(知事又は大臣)に提出します。
1. 変更届の提出期限(30日以内の原則)
建設業法第12条により、「変更があった日から30日以内」と定められています。
この「変更があった日」とは、実際に使用人が交代した日や、住所、氏名の変更が生じた日(住民票の異動日など)を指します。
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遅延の影響:万が一、30日を超えて提出した場合も、原則として許可が取り消されることはありませんが、行政庁からの指導対象となります。特に、経営事項審査(経審)を受ける際に、遅延の状況によっては厳しいチェックが入る可能性があります。
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注意:常勤役員や専任技術者の変更の場合、その他の届出は「2週間以内」など、さらに早い期限が設定されているものもあるため、複合的な変更の際は最も早い期限に合わせる必要があります。
2. 届出が必要な「変更」の事由一覧
建設業法において、使用人に関して届出が必要な主な事由は以下の通りです。
| 事由の種類 | 届出の内容 | 使用する主な様式 |
| 選任(新設) | 新たな使用人の選任、営業所の新設に伴う選任 | 様式第7号(専任技術者等)に含めて記載 |
| 解任(廃止) | 使用人の退職、本店への異動、営業所の廃止 | 様式第7号、第3号(営業所廃止など) |
| 氏名の変更 | 結婚等による氏名変更 | 様式第7号 |
| 住所の変更 | 使用人の住所変更 | 様式第7号 |
| 役割の変更 | 専任技術者や経営補佐者との兼任状況の変化 | 様式第7号、第8号(経営体制など) |
3. 届出の提出先と各行政庁の対応
変更届の提出先は、許可を受けた行政庁となります。
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大臣許可(複数の都道府県に営業所を設置):主たる営業所(本店)を管轄する都道府県の窓口を経由して、国土交通大臣へ提出します。
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知事許可(東京、埼玉、千葉、神奈川など一つの都道府県内に設置):その都道府県知事へ提出します。
行政庁により提出すべき附属書類(住民票の要否、健康保険証の写しの要否など)が若干異なる場合があります。
必ず許可を受けた行政庁の手続き要領を確認するか、専門の行政書士に相談する必要があります。
建設業許可 支配人・支店長変更のポイント
結論:支配人の変更は「登記」が必要です。
支店長の変更は「常勤性の確認」が重要になります。
どちらも新たな使用人の「欠格要件」を再度チェックすることが肝要です。
1. 支配人の選任・変更手続きと登記の関係
「支配人」を使用人として選任する場合は、会社法に基づき、必ず法人の登記簿に登記する必要があります。
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登記が必須:使用人としての届出とは別に、法務局で支配人の選任登記を行います。解任の場合も抹消登記が必要です。
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登記簿の提出:建設業許可の変更届を提出する際は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を添付し、登記された使用人であることを証明します。
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登記前の届出:登記手続きに時間がかかる場合でも、建設業法の届出期限(30日以内)が優先されます。行政庁によっては「登記申請中」の旨を記載した書類で仮に受け付ける場合もありますが、事前に確認する必要があります。
2. 支店長などの変更手続きと常勤性の確認
支店長などの「使用人」には登記の義務はありませんが、許可要件の一つである「常勤性」を厳格に証明する必要があります。
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常勤の要件:新たに「使用人」として選任された者は、その営業所に常に勤務していること(常勤)が必須です。本店の役員や他の営業所の使用人との兼任は、原則として認められません。
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常勤性の証明:社会保険の被保険者証の写しや、雇用契約書、出勤簿の写しなどを提出します。健康保険の事業所名や所在地が該当の営業所と一致しているか、あるいはそこでの勤務実態が明確であることが重要です。
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権限委任の証明:新たな支店長に請負契約の締結権限が付与されたことを証明する会社の組織図や、権限委任状なども求められる場合があります。
3. 使用人の欠格要件の再度確認
新たに選任される使用人も、建設業法第8条に定められる「欠格要件」に該当してはなりません。
欠格要件に該当する使用人を置いていることが判明した場合は、会社全体の許可が取り消される重大な事態になりかねません。
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欠格事由:役員と同様に、破産手続きの開始決定を受けて復権を得ていない者、建設業法などの法令に違反して罰金以上の刑に処されてから5年を経過しない者、暴力団員などが該当します。
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提出書類:新たな使用人の氏名を記載した「誓約書」(様式第6号)と、「身分証明書」(本籍地の市町村長が発行)などを添付し、欠格事由に該当しないことを証明します。
建設業許可 使用人 変更 届出の必要書類と様式
結論:使用人の変更届では、主に様式第7号(専任技術者等の一覧表)を用いて行います。
新たな使用人が欠格要件に該当しないことを示す「誓約書」と「身分証明書」の添付は必須です。
1. 主要な提出様式(令第3条の届出書)
建設業許可に関する変更届は、様式第22号の「変更届提出書」に必要な附属書類を添付して提出する形式を取ります。
使用人の変更に関連する主要な様式は以下の通りです。
| 様式番号 | 名称 | 記載内容 |
| 様式第7号 | 専任技術者等の一覧表 | 営業所ごとの専任技術者、その他の使用人の氏名、住所、担当業務などを記載。使用人の変更の場合、新旧の記載が必要です。 |
| 様式第6号 | 誓約書 | 新たな使用人が建設業法の欠格要件に該当しないことを誓約する書類。 |
| 様式第13号 | 常勤役員等の一覧表 | 使用人が経営体制の一部(経営補佐者など)を兼ねる場合に提出します。 |
2. 必須の添付書類一覧(新規選任の場合)
使用人の選任に伴う変更届を提出する際には、様式のほかに、その者が確かに使用人として適格であることを示す公的書類が必要です。
| 書類の名称 | 提出目的 | 備考 |
| 身分証明書 | 欠格要件の確認(被後見人、破産者でないこと) | 本籍地の市町村が発行。住民票ではないため注意。 |
| 住民票の写し | 常勤性の確認(住所、氏名の確認) | 法人の場合は、登記簿で住所が確認できれば不要な場合もあります。 |
| 登記簿謄本 | 支配人の登記の確認 | 支配人を選任した場合のみ必要。 |
| 健康保険証の写し | 常勤性と社会保険加入の確認 | 提出先の都道府県により提出方法や要否が異なります。 |
| 組織図など | 権限委任の確認 | 営業所の組織内での位置づけと権限範囲を示します。 |
3. 使用人が専任技術者を兼ねる場合の手続きの複合化
多くの建設業者様では、支店長がその営業所の「専任技術者」を兼任しているケースがあります。
使用人の交代は、専任技術者の交代と同時に発生するため、手続きが複合的になります。
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技術者の資格証明:新たな専任技術者の資格証明書(施工管理技士など)の写しや、実務経験の証明書類(請負契約書の写しなど)を追加で提出する必要があります。
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「2週間以内」の期限:専任技術者に欠員が生じた場合、新たな技術者を設置して届け出る期限は「2週間以内」と、使用人の変更届(30日以内)よりも早いため、全体の手続きを2週間以内に終えるよう迅速な対応が求められます。
よくある質問と解決策
結論:使用人の変更届は法定期限が厳格です。
複雑な手続きを伴うため、事前に行政書士に相談することが最善の解決策です。
Q1. 使用人の氏名変更(結婚等)は届出が必要ですか?
A. はい、必要です。建設業法施行令第3条には「使用人の氏名」が届出を要する事項として明記されているため、結婚や離婚に伴う氏名変更の場合も、変更があった日から30日以内に変更届(様式第7号)を提出する必要があります。
氏名変更を証明する公的書類(住民票など)を添付します。
Q2. 営業所の使用人が異動により退職した場合、後任がいなくても届出は必要ですか?
A. 必要です。使用人の「解任(退職)」も変更届の対象であり、後任の選任の有無に関わらず、解任の事実があった日から30日以内に届け出なければなりません。
また、使用人がいなくなった営業所は契約締結の権限を持つ者が不在となるため、実態に合わせて営業所を廃止するか、速やかに後任を設置する必要があります。
Q3. 変更届の提出を忘れた場合、罰則はありますか?
A. 届出を怠った場合は、建設業法第50条に定める「罰則」の対象となる可能性があります。
法律上は「6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
実際に罰則が適用されるのは悪質な場合に限られますが、行政庁からの指導(始末書の提出など)を受けることは避けられません。
特に、経営事項審査などで不誠実な事業者と認識されると、入札参加資格の取り消しにつながる可能性もあります。
Q4. 遠隔地に設置した「支社」の長も「使用人」に該当しますか?
A. 該当する可能性が高いです。
名称が「支社」や「営業部」であろうと、建設業法で定義される「営業所」に該当します。
その長に請負契約の締結権限が委任されている場合は「使用人」として届出が必要です。
実際に、その場所で契約書を締結し、業務を行っているかどうかかの「実態」で判断されます。
Q5. 変更届は行政書士に依頼する必要はありますか?
A. 必須ではありませんが、依頼することを強くお勧めします。
使用人の変更は、その者が役員や専任技術者を兼任している場合が多く、複数の様式を同時に提出する必要があります。
様式の記載不備や、必要な添付書類(特に公的書類)の収集漏れがあると、行政庁からの補正指導で手続きが長期化します。
専門家である行政書士に依頼することで、法定期限内に確実に手続きを完了させることができます。
建設業許可の使用人変更届に関する無料相談窓口
建設業の許可を持つ事業者にとって、使用人の変更届の提出は、単なる事務作業ではなく、建設業法を遵守し、引き続き適正に事業を営むための重要な義務です。
様式第7号や第6号など、必要な書類は多岐にわたります。
特に遠隔地の支店の手続きは煩雑になりがちです。
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公開日:2025.12.11 06:30
更新日:2025.12.11 15:13



