経営業務管理責任者は廃止?建設業許可の要件改正と管理者の役割

建設業許可を取得・維持する際に必須とされてきた要件の一つに、「経営業務管理責任者(経管)」の設置がありました。
しかし、建設業法の改正により、この制度は廃止され、新しい管理体制へと移行しています。
- 「経営業務管理責任者が廃止されたのはいつからか?」
- 「今、許可申請をする際に必要な要件はどう変わったのか?」
という疑問を抱える建設業者様も多いでしょう。
当記事では、建設業許可申請を専門とする行政書士事務所として、
- 建設業法改正の背景
- 経営業務管理責任者制度が廃止された正確な時期
そして新たに必要となった経営体制の要件について、網羅的かつ解決に繋がる知識を提供します。
東京、埼玉、千葉、神奈川エリアで許可取得を検討されている経営者様は、必見の内容です。
建設業許可 経営業務管理責任者の廃止はいつから?
結論:経営業務管理責任者という要件が廃止され、新しい体制へと移行したのは、改正建設業法が施行された令和2年10月1日(2020年10月1日)からです。
この改正により、許可申請を行う際の経営体制の基準が大きく変更されましたが、経営を管理する責任者が必要なくなったわけではない点に注意が必要です。
新しい要件は、会社の組織全体の管理能力を評価するものへと進化しています。
建設業法改正の背景と目的
従来の経営業務管理責任者(経管)要件は、「許可を受けようとする業種に関し、5年以上の経営業務の管理を行った経験を有する者」を常勤で置くことが必須でした。
しかし、この制度には次のような問題が指摘されていました。
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属人性の高さ:特定の者一人に経験が集中する構造で、事業承継や人材確保のハードルを上げていました。
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組織体制の評価不足:優秀な管理体制を敷いていても、経管の経験年数が足りなければ許可が取れず、実態に合わない側面がありました。
改正建設業法は、これらの問題を解決し、建設業の持続的発展を促進することを目的としています。
経験豊富な一人の者に頼るのではなく、組織として適切に業務を管理し、法令遵守体制を確保できる建設業者を評価する方向へとシフトしました。
経営業務管理責任者要件は廃止ではなく「緩和」
「廃止」という言葉が広く使われていますが、厳密には経営業務を管理する者が必要なことに変わりはなく、従来の者一人で全ての経験を証明する要件が廃止されました。
新しい証明方法が追加されました。
要件が緩和されたと理解するのが正確です。
建設業許可 経営業務管理責任者要件の改正概要
結論:改正後は、「経営の実績と能力を持った常勤の役員」を置くという従来要件(A)に加え、「複数人の役員で補佐する体制を構築する要件(B)」が新たに追加されました。これにより、許可取得の道が大きく広がりました。
1. 従来要件(A):一人で経験を証明
従来の経管要件と同様、以下の者が常勤でいることを証明します。
| 要件区分 | 必要な経験 |
| A-1 | 許可を受けようとする業種の役員としての経営業務の管理の経験を5年以上 有する者 |
| A-2 | 許可を受けようとする業種以外の建設業の役員としての経営業務の管理の経験を6年以上 有する者 |
一人の者が特定の年数を満たす必要がある点は変わっていません。
しかし、建設業法施行規則第7条の改正により、証明できる役職の範囲が広がりました。
例えば、執行役員や支配人など、「取締役に準ずる地位」で経営に直接関与した者の経験も認められる可能性が高まりました。
2. 新要件(B):複数人による補佐体制
新たに導入された要件です。
会社の組織全体で経営を管理する体制を示します。
常勤の役員のうち一人が以下のいずれかを満たしている場合に、別の役員または使用人がその役員を補佐する体制を構築します。
| 要件区分 | 常勤の役員の経験 | 補佐する者の設置 |
| B-1 | 建設業の役員等としての経験を2年以上 有する者 | 財務、労務、業務、技術の管理を担当する者(各々2年以上の経験を有する者)を設置 |
| B-2 | 建設業の役員等としての経験を5年以上 有する者 | 財務、労務、業務、技術の管理を担当する者(各々の経験年数は不問)を設置 |
| B-3 | 5年以上の役員等としての経験はないが、建設業の役員等に準ずる地位を有する者(常勤) | 上記B-1と同様に4分野の補佐者を設置 |
この新要件(B)が、従来経管要件を満たせなかった建設業者様にとっての大きな緩和となりました。
常勤の役員の経験年数が短くても、組織として管理体制を示せれば許可申請が可能になったのです。
経営業務管理責任者 証明の方法と注意点
結論:改正後も、経営業務の管理に関する証明書類収集は許可申請の最も難しい部分です。特に新要件(B)では、補佐する者の職制や役割を明確に示す組織図や業務分担表などが必要となります。
証明書類の種類と難易度
1. 常勤の役員の経験証明(要件A・B共通)
原則として、過去の建設業者での役員としての在任期間や、経営に関与した事実を示さなければなりません。
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登記事項証明書(役員の在任期間を証明)
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確定申告書の写し(個人事業主の場合)
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財務諸表(経営に関与していた期間の確認)
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職制を証する書類(執行役員などの場合)
特に、過去の会社の書類を収集するのが難しいケースが多く、この部分で許可申請が滞ることが頻繁にあります。
行政書士に依頼することで、過去の書類がない場合の証明方法について適切なアドバイスを得られます。
2. 新要件(B)補佐体制の証明
新要件(B)で申請する場合、常勤の役員の経験証明に加え、新たに下記の書類が必要となります。
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組織図:常勤の役員と補佐者の職制上の位置づけ、権限を示します。
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業務分担表:財務、労務、業務、技術の管理担当が明確に分担されていることを示します。
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補佐する者の経験証明:B-1の場合は、担当分野に関する2年以上の経験を証明する書類が必要です。
補佐者は、建設業の経験でなくても、一般的な企業での財務管理や労務管理の経験で認められる可能性があります。
専門行政書士と相談しながら、適切な補佐体制を構築することが解決の鍵です。
建設業許可 要件緩和のメリットと今後の注意
結論:改正建設業法による経営体制要件の緩和は、建設業の新規参入や事業承継を促進する大きなメリットがあります。
しかし、許可取得後も新体制を維持し、法令遵守を徹底する義務は変わりません。
要件緩和の大きなメリット
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新規参入の促進:経験年数が短い若い経営者でも、組織力で要件を満たすことが可能になりました。
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事業承継の円滑化:後継者に経管経験がなくても、現経営者が持つ技術やノウハウを活かした体制で許可を引き継ぐことが容易になりました。
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組織力の強化:許可取得のために、必然的に財務・労務・業務・技術の管理を分担する必要が生じ、企業全体の管理体制強化に繋がります。
許可取得後の管理体制維持の注意点
新要件(B)で許可を取得した建設業者様は、特に以下の点に注意が必要です。
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常勤性の維持:常勤の役員も補佐する者も、許可を受ける営業所に常勤している必要があります。異動や退職が発生した場合は、速やかに変更届を提出しなければなりません。
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業務分担の実態確保:組織図上で分担されているだけでなく、実際に各担当者がその業務を適正に管理している事実が求められます。
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専任技術者の兼任制限:経営体制の役員や補佐者が、同時に専任技術者を兼任できるかは、常勤性や業務分担の実態により個別に判断されます。
よくある質問:建設業許可 廃止 いつと新要件
経管制度の廃止と新要件への移行に関しては、細かな疑問が多い分野です。
特に質問の多い項目を解説します。
Q1. 経営業務管理責任者は全員廃止されたのですか?
A. 「経営業務管理責任者」という制度・要件名は廃止されましたが、代わりに新しい経営体制要件(AまたはB)が導入されました。従来の経管要件(A)を満たす方は、引き続きその経験を活かして許可申請が可能です。
名称が変わったという認識が正確です。
Q2. 新要件(B)の補佐者は、建設業の経験が必要ですか?
A. 必須ではありません。財務管理、労務管理、業務管理、技術管理の4分野のうち、財務と労務は建設業以外の会社での経験でも認められる可能性が高いです。
ただし、担当業務を行っていたことを証明する書類(職務分掌規定や辞令など)が必要です。
Q3. 専任技術者と経営体制の役員は兼任できますか?
A. 兼任は可能な場合がありますが、条件があります。
特に常勤性の要件を満たすことが大きなポイントです。
同一の営業所に常勤しており、専任技術者としての職務(請負契約の適切な締結や履行の確保)と経営管理の職務の両方を遂行できる体制が認められれば兼任は可能です。
実態に即した判断が必要なため、行政書士にご相談ください。
Q4. 新要件(B)で許可を取得した場合、経営事項審査の評価に影響しますか?
A. 新要件(B)で許可を取得したことが、直接、経営事項審査(経審)の評価を下げるわけではありません。
経審で評価されるのは、
- 財務状況(X点)
- 工事実績(Z点)
- 技術力(P点)
- 社会性(W点)
などであります。
許可の根拠となる経営体制は直接の評価項目ではありません。
しかし、新体制の導入が、企業の組織的な安定性向上に繋がります。
そのため、間接的に良い影響を与える可能性はあります。
建設業許可の改正要件に関する無料相談窓口
建設業法改正による経営業務管理責任者制度の廃止と新要件への移行は、許可取得を目指す全ての建設業者様にとって重要な変更です。
特に、新要件(B)を利用する場合は、必要な書類や組織体制の証明方法が複雑化しています。
当事務所は、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアの建設業許可を専門とする行政書士事務所として、改正法に完全に適合したサポートを提供しています。
貴社の現状を詳細にヒアリングし、新要件(B)の補佐体制構築を含め、許可取得への最短ルートをご提案します。
- 「新要件で申請できるか知りたい」
- 「補佐者の経験を証明する方法が分からない」
など、どんな些細なご相談でもお気軽にお問い合わせください。
佐藤栄作行政書士事務所 |
公開日:2025.12.10 19:30
更新日:2025.12.10 23:09



