建設業許可 業種追加の完全ガイド:要件・費用・手続きの流れを専門家が解説

建設業許可の業種追加申請とは、既に建設業許可を取得している建設業者が、現在許可を受けている業種以外の新たな業種(全29業種から選択)の許可を取得するための手続きです。
この申請は、既存の許可とは異なります。
主に追加する業種に対する専任技術者の要件を満たしているかが審査の中心となります。
新たな業種を追加することで、請け負うことのできる建設工事の種類が拡大します。
事業の成長に直結します。
当事務所は、東京、埼玉、千葉、神奈川の地域に特化した行政書士として、迅速かつ確実な業種追加申請をサポートします。
業種追加の要件と技術者証明
結論:業種追加申請で最も重要な要件は、追加する業種ごとに専任技術者を各営業所に常勤で配置します。
その者が資格または実務経験を有していることを証明することです。
専任技術者の実務経験と資格
業種追加にあたっては、既に満たしている経営業務の管理責任者(経管)や財産的基礎の要件は、一般的に再度審査されません。
焦点は、専任技術者の充足に絞られます。
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一般建設業の技術者要件:追加する業種に関して、指定の国家資格を有している者、またはは10年以上の実務経験を有している者が必要です。学科卒業後3年または5年の経験で認められる場合もあります。
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特定建設業の技術者要件:追加する業種に関して、指定の技術検定一級合格者、またはは指導監督的実務経験を含む必要年数の経験を有している者が必要です。一般よりも要件が厳しく、監理技術者の資格を有することが求められる場合が多いです。
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実務経験の証明:実務経験による場合、過去の請負契約書、注文書、請求書などの疎明資料を収集して、期間と内容を詳細に証明する必要があります。この書類収集が、申請手続きの中で最も時間と労力を要する部分です。
専任技術者の常勤性と他の要件
専任技術者は、その営業所に常勤していることが絶対条件です。
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常勤性の証明:健康保険証の写し(被保険者証)、雇用契約書、給与明細などで、申請会社との雇用関係と常勤性を証明します。特に、他の営業所の技術者との兼任は、原則として認められません。
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社会保険の加入:建設業許可の大前提として、健康保険、厚生年金保険、雇用保険(労働保険)に適正に加入していることが必要です。業種追加の際にも再度確認されます。
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欠格要件の非該当:役員や支配人に欠格要件(破産者、建設業法違反による罰則など)に該当する者がいないことも当然ながら要件となります。
申請書類と作成のポイント
結論:業種追加申請の書類は、新規申請と同等のボリュームがあります。
追加する業種の技術者に関する書類を中心に作成します。
業種追加に必要な様式
既存の許可情報を利用しつつ、変更部分と追加する情報を記載します。
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様式第1号(許可申請書):既に取得している業種と追加する業種を全て記載して提出します。知事許可と大臣許可で様式が異なります。
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様式第7号(専任技術者の一覧表):新たに配置する技術者の氏名、資格、担当する業種を記載します。
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様式第8号(専任技術者証明書):追加する業種の技術者ごとに、資格や実務経験の詳細を記載します。
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様式第9号(実務経験証明書):資格ではなく、実務経験で要件を満たす場合に、経験した工事の内容、期間、請負金額などを詳細に記載します。
工事経歴書と財務諸表の取り扱い
業種追加申請は、過去の経営状況を再度報告する必要がある場合とない場合があります。
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直前の決算変更届:申請直前の事業年度の決算変更届(工事経歴書、財務諸表など)が提出済みであることが前提となります。未提出の場合は、遡って提出する必要があります。
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工事経歴書の追加:実務経験を証明するために、過去に行った工事の請負契約書や注文書の写しを添付する必要があります。証明に使用する工事経歴が、様式第15号(工事経歴書)に記載されている必要はありませんが、整合性を取る必要があります。
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その他の証明書類:技術者の国家資格の合格証明書の写し、健康保険証の写し、住民票の写し、身分証明書など、多岐にわたる証明書類を収集して添付します。
申請の費用と行政書士報酬
結論:業種追加の法定手数料は決まっております。
これに加えて行政書士への報酬は、実務経験証明の難易度によって変動します。
行政庁への法定手数料
業種追加申請に必要な行政庁へ支払う手数料は、新規取得とは異なる金額が設定されています。
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知事許可の場合:1業種追加ごとに所定の手数料(例:都や県の収入証紙で納付)を支払います。金額は各行政庁によって異なります。
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大臣許可の場合:所定の手数料(収入印紙で納付)を支払います。
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同時申請:許可の更新と同時に業種追加を行う場合、更新の手数料と追加の手数料の両方が必要となります。
行政書士への依頼報酬の相場
行政書士への報酬は、実務経験の証明書類の有無や収集の難易度によって大きく変動します。
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報酬の目安:一般的に、1業種追加あたり10万円から20万円程度が相場です。ただし、実務経験の証明に必要な過去の請負契約書の収集や内容の精査に時間がかかる場合は、費用が増加することがあります。
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費用の内訳:報酬には、申請書類の作成、技術者の実務経験証明のサポート、証明書類の収集代行、行政庁への提出代行と質疑応答の対応が含まれます。
申請の流れと許可までの期間
結論:業種追加申請は、書類作成に最も時間がかかります。
行政庁の審査期間は知事許可で1ヶ月前後です。
申請のステップと期間
業種追加の手続きは、大きく分けて「事前準備」と「申請・審査」の2つに分けられます。
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事前準備(1ヶ月~3ヶ月):追加する業種の専任技術者を選定し、その者の実務経験を証明するための過去の契約書や資料を収集します。資格による場合は、証明書を用意します。
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申請・提出:作成した申請書類を管轄の行政庁(都庁、県庁など)の建設業窓口に提出します。提出時に不備があれば、その場で補正を求められることがあります。
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審査期間(約30日~45日):行政庁による書類審査が行われます。追加の質問や書類の提出が求められる場合もあります。
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許可:審査が完了すると、追加された業種が記載された新しい許可通知書が交付されます。
行政庁の対応と注意点
東京、埼玉、千葉、神奈川の各行政庁は、提出様式や添付書類に独自のルール(ローカルルール)を設けていることがあり、実務経験の証明に関しても独自の指導や確認を行うことが多いです。
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東京都:実務経験の証明資料の精査が厳しく、契約書の内容と技術者の関与を詳細に確認されます。事前に専門家にチェックを依頼することが推奨されます。
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神奈川県・千葉県・埼玉県:技術者の常勤性の証明資料(社会保険関連)に対して、追加の資料を求められることがあります。
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行政書士の役割:地域に特化した行政書士は、これらのローカルルールを把握しているため、不備なくスムーズな提出を実現できます。
業種追加と事業拡大の戦略
結論:業種追加は、単なる行政手続きではなく、事業拡大や公共工事の受注戦略の一環として捉えるべきです。
業種追加がもたらすメリット
許可を受けた業種を追加することで、請け負う工事の幅が広がります。
競争優位性を高められます。
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受注の拡大:建設業法上、許可を受けている業種でないと500万円以上の工事を請け負うことができません。追加により、新たな市場(例:内装工事業、電気工事業など)への参入が可能となります。
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信頼性の向上:多くの業種の許可を有していることは、元請けや発注者に対して、総合的な施工能力と信頼性をアピールできます。
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附帯工事の適正化:主たる工事に付随する「附帯工事」の範囲を超える工事を請け負う場合、別途その業種の許可が必要となります。追加により、法律に従った適正な事業運営が可能となります。
特定建設業の業種追加の注意点
特定建設業の業種追加は、一般建設業よりも遥かに要件が厳しくなります。
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技術者要件の厳格化:前述の通り、監理技術者の資格を有する者の配置が必要となります。
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財産的基礎の維持:特定建設業には、資本金、欠損比率、流動比率など、厳格な財産的基礎の要件があります。業種追加の時点でも、この要件を継続して満たしているかを再度確認する必要があります。
行政書士による確実なサポート
結論:行政書士に依頼することで、最も難易度の高い実務経験証明のサポートを受けられます。
時間と労力を大幅に削減できます。
実務経験証明の壁を克服する支援
業種追加の最大の障壁は、技術者の過去の実務経験を確実に証明する書類(請負契約書など)を探し、整理することです。
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資料の精査と選別:過去の大量の契約書や注文書から、証明に必要な期間と内容を満たす書類を選別し、様式第9号(実務経験証明書)に記載する内容を最適化します。
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行政庁への事前確認:疑義の生じそうな点は、行政庁に事前に確認し、申請後の補正回数を減らします。これは、許可を迅速に得るために極めて重要です。
トータルで費用を抑える戦略
行政書士への報酬は発生しますが、自社の貴重な経営資源(時間、人件費)を本業に集中させることで、間接的な費用対効果は非常に高いです。
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無駄な時間の削減:不慣れな申請手続きに要する調査、書類作成、窓口への往復の時間と労力をゼロにできます。
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確実性の確保:不備による申請のやり直しや、許可の遅延を防ぎ、新たな工事の受注機会を逸するリスクを最小限に抑えます。
よくある疑問と対処法
結論:業種追加に関する「一般と特定の同時追加」や「電気工事業の特例」など、複雑な疑問を解決します。
業種追加と一般・特定の同時申請
既に一般建設業の許可を持っている会社が、新たな業種で「一般」と「特定」を同時に取得したい場合の対処法があります。
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同時申請は可能:新たに追加する業種に関して、一般と特定の両方の要件を満たせば、1回の申請で同時に許可を得ることが可能です。ただし、両方の技術者要件(資格または経験)を満たしていることが必要です。
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技術者の兼任:同一の営業所で、一般と特定の専任技術者を同一人が兼任することは、一定の要件(例:一級資格を有するなど)を満たせば可能な場合もあります。
電気工事業・電気通信工事業の特例
電気工事業と電気通信工事業は、建設業許可のほかに、各法律に基づく登録(電気工事業の登録など)が必要となる場合があります。
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同時申請の必要性:電気工事を行う場合、建設業許可の追加と、電気工事業の開始届(または登録)を併せて行う必要があります。両方の手続きを一度に専門行政書士に依頼することが効率的です。
地域特化型の申請と未来戦略
結論:東京、埼玉、千葉、神奈川の申請窓口の実情に精通した専門家に依頼して、確実な許可取得を実現します。
関東4都県の窓口対応と対策
建設業者が集中する関東エリアでは、窓口の混雑や審査の厳格さを考慮した対策が必要です。
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事前の予約と相談:一部の行政庁では、申請の前に事前相談の予約を必要とする場合があります。専門家は、この予約から対応を代行します。
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補正の迅速な対応:提出後に書類の不備(補正)が指摘されることは珍しくありません。行政書士は、その内容を正確に把握し、迅速に書類の修正と再提出を行います。
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トータルな視点:業種追加が完了した後の「経営事項審査(経審)」や「公共工事の入札参加資格」の取得までを見据えた申請書類の作成を行います。
佐藤栄作行政書士事務所 |
公開日:2025.11.20 08:32
更新日:2025.11.20 18:59



