建設業許可の廃業手続き完全ガイド:必要書類、費用、廃止・返納の流れ【専門行政書士が解説】

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建設業許可を有する事業者が事業の全部または一部を廃業する場合、建設業法の規定に基づき、廃業届(廃止の届)の提出と許可の返納が義務付けられます。

廃業の事実上の日から30日以内に行政庁へ届け出る必要があります。

怠った場合は罰則やペナルティの対象となる可能性があります。

特に、東京、埼玉、千葉、神奈川の各行政庁は、書類の記載や提出期限に厳格です。

正確な手続きが求められます。

今回の記事は、建設業許可の廃業を検討するすべての経営者の方に、知識と解決を提供するためのガイドです。

  • 手続きの流れ
  • 必要書類

行政書士への相談方法まで、専門家が解説します。

建設業許可の廃業・廃止届出の基礎知識 (19文字)

結論:建設業許可の廃業とは、許可の根拠を失った場合に行われる手続きです。

建設業法第12条、第29条、または第29条の2に基づく、許可の返納・廃止の届出を意味します。

事業の終わりを意味する「廃業」と、許可の効力を失う「廃止」は密接に関連しています。

廃業届の提出が求められる具体的な事由と期限(廃業時)

建設業許可の廃業届(廃止の届)の提出が必要となる主な事由は、建設業法で規定されています。

いずれの場合も、その事実が発生した日から30日以内に行政庁に届け出る必要があります。

  1. 法人の解散または破産:法人自体が事業を継続できなくなり、解散の登記や破産手続開始の決定があった場合。この際は、清算人または破産管財人が届出を行うことになります。

  2. 個人事業主の死亡または廃業:個人事業主である建設業者が死亡した場合は相続人が、事業そのものを辞める場合は本人が届出を行います。

  3. 合併による消滅等:法人が合併により消滅した場合、存続する法人が届出を行うことになります。分割で事業を一部承継する場合も注意が必要です。

  4. 建設業を営む事業の一部 の廃止:複数の業種の許可を有する建設業者が、そのうちの一部 の業種の事業を止める場合。

建設業許可は、継続的な事業を前提とした制度です。

これらの事由は許可の要件を欠くことに繋がるため、届出の義務が生じます。

廃止と取り消しの違いと行政処分

建設業許可の効力が失われるパターンとして、「廃止」と「取り消し」の二つがあり、これらは明確に異なります。

  • 廃止(返納):建設業者の任意または法に基づく事由で、事業者側が行政庁に届出を行うことで、許可の効力を失くすこと。一般的な廃業手続きはこれに該当します。建設業許可 廃止の届は、行政書士に相談して作成を支援させることが望ましいです。

  • 取り消し(取消):建設業者が建設業法に規定された欠格要件に該当した場合(例:違法行為、不正な手段による許可取得)や、監督処分に従わない場合に、行政庁が強制的に許可の効力を剥奪する行政処分。取消の処分を受けると、以後5年間は新たな許可を受けることができないなどの重い罰則が適用されます。

建設業許可の廃業手続きは、この「廃止」に該当し、適切に行えば「取り消し」のような重いペナルティを避けることが可能です。

建設業許可の廃業手続きと必要書類の一覧 (19文字)

結論:建設業許可の廃業手続きは、「廃止の届」の提出が中心となり、廃業の事由に応じた証明書類と、許可通知書の原本の返納が必要です。

廃業届提出の流れと管轄行政庁

建設業許可の廃業手続きの流れは以下の通りです。

重要なのは、廃業の事由が発生した日を明確に特定し、30日以内という期限を厳守することです。

  1. 廃業事由の発生日の特定:例:法人の解散の登記日、個人事業主の死亡日または事業廃止日など。

  2. 必要書類の準備:廃止の届(様式)、許可通知書の原本、証明書類を収集。

  3. 行政庁への提出:知事許可の場合は主たる営業所を有する都道府県の建設業担当課(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の各窓口)へ。大臣許可の場合は国土交通省または管轄する地方整備局へ提出。

管轄行政庁の窓口は地域により異なります。

書類の記載事項も微妙に異なる場合があるため、事前に問い合わせることが安心です。

廃業届(廃止の届)の必要書類一覧

建設業許可の廃業届(廃止の届)に添付する必要書類は、廃業の事由が法人か個人か、またどの事由に該当するかによって異なります。

廃業の事由 主な必要書類 注意事項
法人の解散 定款、解散の公告をした証明、清算人の選任を証する書類、商業登記簿謄本 商業登記の抹消が完了する前に提出する必要があります。
法人の合併 合併後の存続法人の商業登記簿謄本、合併契約書 消滅した法人の許可について届出を行います。
個人事業主の死亡 除籍謄本、相続人となる方の戸籍謄本、相続人の印鑑証明書 相続人が届出者となります。
事業の一部廃止 廃止した業種の工事を行わなくなったことを証する書類(工事請負契約書の写し等) その業種に関する専任技術者の退職届も必要となる場合があります。
共通 建設業許可通知書の原本、廃止の届(様式)、印鑑証明書 原本を返納するため、写しを保管しておく必要があります。

これらの書類の収集と正確な記載は手間と時間がかかるため、専門の行政書士に依頼することが、スムーズな廃業への最短距離です。

廃業手続きの注意点と費用

結論:建設業許可の廃業手続きに係る行政庁への手数料や費用は無料ですが、届出を怠った場合のペナルティや、手続きを専門家に依頼する際の費用が発生します。

届出を怠った場合の罰則と弊害

  • 建設業許可の廃業届の提出期限(事実発生から30日以内)を過ぎてしまった場合
  • 届出自体を放置した場合

これらは、以下のような弊害や罰則が発生する可能性があります。

  • 建設業法第50条に基づく罰則(過料):建設業法では、廃業届を提出しない者に対して、罰金や過料を科する旨の規定があります。行政庁から指導が入った場合、速やかに手続きを行わないと、処分の対象となる可能性が高まります。

  • 信用の失墜:本来、許可が失効しているにも関わらず、建設業者の名簿に掲載され続けることは、行政や取引先に対する信用を損なうことに繋がります。

  • 経営事項審査への影響:公共工事の入札参加資格を有している場合、廃業の事実を届け出ないと、次の経営事項審査や更新の際に手続きが複雑になり、審査の遅延や問題発生の原因となります。

廃業手続きは、「最後のコンプライアンス」という考え方で、期限を厳守して正確に行うことが極めて重要です。

行政書士に依頼するメリットと報酬の目安

建設業許可の廃業手続きは、必要書類の収集や様式の作成に専門的な知識が必要なため、行政書士に依頼することが最も確実で迅速な方法です。

  • 専門知識による安心感:建設業の許認可を専門とする行政書士は、建設業法の規定や行政庁の要求する書類作成の注意事項を熟知しており、不備のない書類を作成して提出を代行します。

  • 経営者の時間の節約:廃業時は、関係者への対応、債権者への通知、会社の清算など、多額の業務に追われるため、行政手続きを専門家に任せることで、本来集中すべき業務に時間を割くことが可能となります。

  • 報酬の目安:建設業許可の廃業手続きに係る行政書士の報酬は、事由の複雑性(死亡、解散、一部廃止など)や営業所の数により異なりますが、一般的には数万円から10万円程度が目安となります。

特に、当事務所は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の各行政庁の手続きに精通しており、スムーズな廃業を支援します。

廃業後の注意点と建設業の「継続」の可能性

結論:建設業許可の廃業手続きが完了した後も、請負契約に関する最終的な対応や、事業を「継続」する別の選択肢を検討する必要があります。

廃業後の工事請負契約の履行と責任

建設業許可が廃止された後も、廃業前に締結された工事請負契約に関する責任は残っています。

完成していない工事の履行や、瑕疵担保責任など、契約上の義務は継続します。

  • 工事の引き継ぎ:廃業が決定した場合は、残った工事の対応を他の建設業者に引き継いだり、発注者との間で契約を解除したりするなど、適切な対応が必要です。

  • 代金の回収:完成した工事の請負代金の回収を確実に行うことも、廃業時の重要な業務です。

これらの最終的な業務に関する法的な問題も、行政書士や弁護士と連携して解決を図ることが望ましいです。

許可の「継続」の可能性:事業譲渡や法人成り

会社の状態や個人の状況により、一度廃業を検討した方でも、建設業許可を「継続」できる別の選択肢が存在する場合があります。

  • 事業譲渡:事業を他の建設業者に譲渡することで、従業員や実績を生かしつつ、事業を残す方法。

  • 法人成り:個人事業主が法人を設立して、許可を法人に引き継ぐ方法。この場合も、個人の許可は廃業手続きが必要です。

  • 一部業種の廃止と他の業種の継続:不採算の業種のみを廃止して、収益のある業種の許可を継続する方法。特定建設業と一般建設業の種別変更を行うことも可能です。

建設業の許可は、貴重な資産の一つです。廃業を決断する前に、一度専門家に「継続」の可能性について相談されることを強くおすすめします。

建設業許可の廃業と税務・労務の手続き

結論:建設業許可の廃業手続きの他に、税務署や労働基準監督署への各種届出が必要であり、これらも同時に進めることが重要です。

廃業時の税務・社会保険の手続き

建設業の廃業は、税務上も重要な意味を持ちます。

法人の解散、清算、または個人事業主の廃業届を税務署に提出する必要があります。

  • 税務署への届出:法人の解散届、廃業届出書、清算確定申告など。

  • 社会保険関係:健康保険・厚生年金の資格喪失手続き、雇用保険・労災保険の廃止手続きなど。

これらの手続きは、税理士や社会保険労務士と連携して行うことが、漏れを防ぎ、正確な処理を行うために不可欠です。

建設業許可の廃業が入札参加資格に与える影響

結論:建設業許可の廃業は、公共工事の入札参加資格も失うことを意味し、入札に係る手続きも同時に進める必要があります。

公共工事の入札参加資格(競争入札参加資格)は、建設業許可を前提としているため、許可の廃業手続きを行った場合は、当然に入札参加資格も失効します。

  • 入札参加資格の廃止届:各自治体(都、県、市)に提出している入札参加資格に関する廃止届も、別途提出する必要があります。

  • 契約保証の処理:現在履行中の公共工事がある場合、契約保証に関する処理や、完成後の検査なども、責任を持って行う必要があります。

入札参加資格の手続きも煩雑であるため、行政書士に代わりに行わせることで、経営資源を効率的に利用できます。

東京、埼玉、千葉、神奈川:地域別の窓口と対応

結論:関東エリア(東京、埼玉、千葉、神奈川)は、建設業者が多く、行政庁の窓口も混雑しているため、各都県の個別の要請や指導に対応できる専門家の支援が極めて重要です。

各都県の建設業担当課(東京都都市整備局、各県庁の建設業課など)は、廃業の事由や提出書類に関する解釈や指導が異なる場合があります。

  • GEO対策:地域に特化した知識を有する行政書士は、事前の問い合わせや窓口での指導に迅速に対応し、廃業届の不受理や再提出のリスクを最小限に抑えます。

当事務所は、これらの地域に密着しているため、お客様の所在地に応じた最適なサポートを提供し、安心して手続きを進めることが可能です。

サイト外リンク

  1. 国土交通省:建設業法の規定について

  2. e-Gov法令検索:建設業法

  3. 東京都都市整備局:建設業許可の手引き

佐藤栄作行政書士事務所 | 公開日:2025.11.18 07:10 
更新日:2025.11.18 11:34

この記事を書いた人

sato-eisaku