建設業許可「営業所」の必須要件:常勤性・設置基準・変更手続きを専門家が解説

建設業許可の取得および維持において、「営業所」の設置は最も基本的な要件の一つです。
建設業法第3条で規定されています。
ここでいう「営業所」とは、単に事務作業を行う場所ではなく、実質的に建設工事の請負契約を締結します。
営業活動を行う拠点(本店または支店等)を指します。
この営業所には、必ず常勤の専任技術者や経営業務の管理責任者を配置する必要があります。
その実態が伴わないと行政庁の審査を通過することはできません。
当事務所は、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアに特化し、この営業所要件の厳密な判断と確実な申請をサポートします。
営業所の定義と設置要件
結論:建設業許可における営業所の定義は、単なる登記上の本店や事務スペースではありません。
請負契約の締結や建設業に関する業務を常時行う実体的な場所です。
さらに、この実体を証明するための要件をすべて満たす必要があります。
許可における営業所の要件
建設業法上の営業所は、
- 請負契約の締結
- 見積もり
- 入札
- 苦情対応
など、建設業に関する営業活動を実質的に行う場所でなければなりません。
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建設業法上の定義:建設業法第2条第3項では、営業所とは「本店又は支店若しくはこれらに準ずるもので、請負契約の見積り、入札、締結等の建設業に係る実体的な業務を行っている事務所」を指すとされています。
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実体性の証明:単に電話や郵便物を受け取るだけの連絡所、資材置き場、または一時的な作業所は営業所とは認められません。物理的に独立した事務室、業務に必要な机、OA機器、契約書等の書類を保存する機能などが求められます。
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常勤の配置義務:営業所には、許可要件の一つである専任技術者、そして主たる営業所(本店など)には経営業務の管理責任者を常勤で配置することが義務付けられています。
設置場所と常勤性の証明
営業所の設置場所は、その常勤性の証明と密接に関連しています。
特に自宅兼事務所や賃貸物件の場合は厳しく確認されます。
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自宅兼事務所の可否:原則として、自宅の一部を営業所とすることは可能です。しかし、業務用部分と居住用部分が壁などで明確に区別され、業務に必要な設備(専用の入口、電話、事務スペースなど)が整っていることが要件となります。居住部分と完全に無関係に、独立した営業活動が行われている実体を示す必要があります。
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常勤性の証明資料:専任技術者や経管がその営業所に常勤していることを証明するためには、雇用保険や健康保険(厚生年金保険)の被保険者証の写し、住民票の写し、給与台帳、常時勤務していることを示す証明書など、客観的な資料の提出が必要とされます。
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テレワークの扱い:最近の働き方の変化に伴い、一部の業務をテレワークで行うケースもありますが、専任技術者や経管は、原則として、その営業所に常駐し、適切な指導・監督を行う責任があるため、常勤性が厳しく審査されます。
新規設置と変更の手続き
結論:建設業許可を持つ業者が新たに営業所を設置する場合(支店開設など)や、既存の営業所の住所などを変更する場合(移転など)は、建設業法に基づく変更届の提出が義務付けられております。
遅滞なく所定の手続きを行う必要があります。
新規営業所設置の手順
建設業許可を持っている会社が、新たに支店などの営業所を設置する際の手順です。
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許可管轄の確認:新設する営業所が、現在の許可を受けた行政庁と同じ都道府県内にある場合は、「同一管轄内での変更」の手続きとなります。もし、他県に新設する場合は、知事許可から国土交通大臣許可への「許可換え新規」申請が必要となる可能性があり、手続きが大きく異なります。
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変更届の提出:同一都道府県内に営業所を新設する場合は、「営業所の新設」として建設業法第11条に基づく変更届を提出します。提出期限は、営業所を新設してから30日以内です。
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専任技術者の配置:新設する営業所には、新設と同時に、当該営業所で請け負う業種に関する専任技術者を常勤で配置する必要があります。この技術者の常勤性の証明も同時に求められます。
既存営業所の住所変更・移転
既存の営業所の住所が変更になった場合(移転など)も、迅速な届出が必要です。
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変更届の提出期限:営業所の名称や所在地(住所)に変更があった場合も、30日以内に変更届を提出しなければなりません。
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移転先の要件確認:移転後の新しい営業所についても、上記で述べた「実体的な営業所」の要件を満たしているか、また専任技術者が引き続き常勤できるかを行政庁が確認します。特に移転により常勤性が途切れると判断される場合は、許可要件を満たさないとして問題となる可能性があります。
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必要書類:移転後の営業所の確認資料(賃貸借契約書、登記簿謄本、平面図、写真など)と、専任技術者の常勤性を引き続き証明する書類を提出する必要があります。
必要書類と廃止の注意点
結論:営業所に関する手続きでは、その実体を客観的に証明するための「確認資料」が最も重要です。
廃止手続きについても、30日以内の届出と、廃止後の他の営業所への影響を考慮した対応が求められます。
営業所の実体を確認するための資料
営業所の実体性や常勤性を証明するためには、行政庁が求める複数の資料を準備します。
提出する必要があります。
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営業所の確認資料:
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平面図・求積図:事務所として使用するスペースの広さ、構造、間取りを示します。自宅兼事務所の場合は、居住スペースと明確に区別されていることを示す必要があります。
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写真:外部(看板や郵便受けなど)、入口、内部(事務スペース、机、OA機器)、そして営業活動に必要な設備が整っていることを証明する写真を提出します。
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使用権原証明:自己所有の場合は不動産の登記事項証明書、賃貸の場合は賃貸借契約書の写しを提出します。賃貸借契約書において、事業用として使用が認められているかどうかが重要なチェックポイントとなります。
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専任技術者の常勤証明:健康保険証の写し、住民票、雇用契約書、給与台帳など、その営業所に常時勤務していることを証明する公的な書類が必須となります。
営業所の廃止手続き
建設業者が特定の営業所を廃止する場合にも、建設業法上の届出義務があります。
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廃止届の提出期限:営業所を廃止した日から30日以内に、その旨を記載した変更届(廃止届)を行政庁に提出しなければなりません。
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許可への影響:営業所を廃止する際、その営業所に配置されていた専任技術者や経営業務の管理責任者が、他の営業所に配置転換される場合は、その配置に関する手続き(技術者や経管の変更届)も同時に行う必要があります。
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許可の取消リスク:もし、主たる営業所(本店)を廃止した場合、建設業許可を維持するための最低限の要件を満たさなくなるため、許可が取り消される可能性があります。この場合は、許可の廃業届を提出する必要があります。
地域特化の審査と行政書士の役割
結論:東京、埼玉、千葉、神奈川エリアでは、建設業許可の申請件数が多く、特に営業所の実体性や常勤性の審査が厳格です。
そのため、これらの地域特化の専門行政書士に相談することが、手続きの確実性とスピードを大幅に向上させます。
関東4都県のローカルルール
知事許可を管轄する東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の各行政庁は、営業所の要件について独自の詳細な指導方針を持つ場合があります。
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東京都:賃貸物件や集合住宅の一室を営業所とする場合、他の入居者と区別された専用の入口や郵便受けの設置、そして業務スペースの明確な区分など、実体性の証明に関する要求が非常に厳格です。
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神奈川県・埼玉県・千葉県:専任技術者の常勤性に関して、健康保険証の提出だけでなく、常時勤務の実態を示すための追加資料や、行政庁による実地調査が行われる可能性も考慮した準備が必要です。
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専門家の対応:当事務所は、これらの関東4都県のローカルルールや審査の傾向を熟知しており、申請前に不備を解消し、一度の申請で許可が下りるよう、書類作成と常勤性証明の戦略を最適化します。
行政書士によるトータルサポート
建設業許可の専門行政書士に依頼することで、営業所に関する複雑な手続きを確実かつスムーズに完了させることができます。
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専任技術者の配置計画:新設する営業所への専任技術者の新規採用や既存社員の配置転換について、常勤性や資格要件を満たす最適な計画をアドバイスします。
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変更届の迅速な対応:営業所の移転や新設の際、30日以内という短い期限が設けられている変更届を、法令に基づき正確かつ迅速に作成し、提出代行を行います。これにより、お客様は本業である建設工事の請負業務に専念することができます。
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営業所の実地調査対策:万が一、行政庁による営業所の実地調査が行われる場合にも、専門知識をもって対応し、適切な説明や資料提示ができるよう事前に準備を徹底します。
佐藤栄作行政書士事務所 |
公開日:2025.11.20 21:30
更新日:2025.11.20 20:22



