建設業許可が必要な工事とは?建設業法における「建設工事の定義」と29種の区分を専門家が徹底解説

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建設業許可制度は、建設業法第3条に基づき、一定の規模以上の建設工事を請け負う建設業者に対して課される許可であり、その根幹をなすのが「建設工事の定義」と「軽微な建設工事」の範囲です。

建設業法第2条第1項において、「建設工事」とは土木建築に関する工事を指します。

この定義に含まれるかどうかが許可の必要性を決定づけます。

経営者や法務担当者は、自社の行う業務がこの定義に該当するのか。

また「軽微な工事」の例外規定に該当するのかを正確に理解しなければ、法律違反(無許可営業)のリスクを負うことになります。

当事務所は、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアに特化した建設業許可の専門家として、この曖昧になりがちな「建設工事の定義」の判断を明確にします。

適正な許可取得をサポートします。

建設工事の法律上の定義

結論:建設業法における「建設工事」の定義は、単に建築や土木といった大枠の工事を指すだけではありません。

「土木建築に関する工事」という広範な概念を指します。

その後の許可の要否や29種類の業種分類の基礎となるものです。

建設業を営む全ての者が正確に理解すべき事項です。

建設業法における建設工事の定義

建設業法第2条第1項では、「建設工事」を「土木建築に関する工事」と定義しています。

  • 具体的な工事の例示:この「土木建築に関する工事」という定義は、後に建設業法施行令第1条によって29種類の業種に具体的に分類され、それぞれの業種が担当する工事の内容が詳細に定められています。例えば、土地を造成する土木工事や、建物を建てる建築工事だけでなく、内装を施す内装仕上工事、電気設備を設ける電気工事なども含まれます。

  • 「土木建築に関する工事」の範囲:これは非常に幅広く、工作物を新築、増築、改築、移転、修繕、模様替え、解体するなど、多岐にわたる行為を含みます。単純な資材の販売や運搬のみを行う場合は通常、建設工事には該当しませんが、資材の加工や据付けが一体となった場合は建設工事とみなされる可能性があります。

  • 一式工事と専門工事の分類:建設工事は、土木一式工事や建築一式工事のように、総合的な企画、指導、調整の下に行われる「一式工事」と、それ以外の専門的な「専門工事」27種類に区分されます。この分類は、許可を取得する際の業種選択に直結します。

29種類の建設工事の区分と分類

建設業法は、建設工事の専門性に応じて29種類の業種を定めております。

許可はこれら29種の業種ごとに行われます。

  • 専門工事27種の詳細:土木一式工事と建築一式工事を除く27の専門工事は、例えば大工工事、左官工事、電気工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、解体工事など、非常に詳細に分けられています。

  • 業種の定義の曖昧さ:それぞれの業種の定義は、建設業法および施行令によって定められていますが、実際の現場では複数の業種が組み合わさることが一般的です。例えば、水道施設工事と管工事、造園工事と土木工事など、区分が曖昧になりがちなため、請け負う工事内容を正確に判断することが求められます。

  • 附帯工事の概念:主たる建設工事に附帯して行われる従たる工事は、主たる建設工事の業種許可があれば、その業種の許可を別途取得せずに請け負うことが可能です。この附帯工事の判断は非常に専門的であり、無許可工事とならないよう注意が必要です。

建設工事に該当しないと判断される例

建設業許可が不要となる業務は、「建設工事」の定義から外れる行為です。

  • 資材の販売のみ:単に建設資材を販売する行為、例えば、ホームセンターでの資材販売や、建材の卸売などは建設工事には該当しません。

  • 運搬・維持管理のみ:建設現場への資材運搬、またはすでに設置されている設備の簡単な維持管理、点検、清掃といった作業は、建設工事とは区別されます。ただし、点検の結果として修繕や取付け作業が発生する場合は、その作業が建設工事に該当する可能性があります。

  • 調査・測量業務:地盤調査や測量、設計のみを行う業務は、建設工事の範疇には含まれません。ただし、設計図に基づき施工まで一貫して請け負う場合は、当然ながら建設工事に含まれます。

許可が必要な工事の要件

結論:建設業許可は、「建設工事」に該当する工事を請け負う場合であっても、請負代金の額が「軽微な建設工事」の基準を超える場合にのみ必要とされます。

この金額基準と、経営業務の管理責任者や専任技術者といった「許可要件」を総合的に満たす必要があります。

許可が必須となる金額基準

建設業許可が必要となる最も一般的な基準は、請け負う建設工事の金額です。

  • 一般建設業許可:1件の請負代金の額が500万円(税込み)以上の建設工事を請け負う場合に必要です。ただし、建築一式工事の場合は、請負代金の額が1,500万円未満、または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事に限って許可が不要となります。

  • 特定建設業許可:発注者から直接請け負う1件の建設工事について、下請業者への発注金額(下請契約の総額)が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる場合に必要となります。特定建設業の要件は、一般建設業よりも厳格な財産的基礎や技術能力が求められます。

  • 「軽微な建設工事」との関係:この500万円未満(建築一式工事の特例を含む)の工事が、建設業法で定める「軽微な建設工事」に該当し、許可が不要な工事となります。

許可を取得するための五つの主要要件

建設業許可を取得するためには、「建設工事」の定義に該当する規模の工事を請け負うこと以外に、主に五つの要件をすべて満たさなければなりません。

  1. 経営業務の管理責任者(経管):適切な経営経験を持つ常勤の役員等が必要です。この要件は、令和2年の建設業法改正により、より柔軟な体制(補佐者を含む)が認められるようになりましたが、基本的な経営経験の証明は依然として重要です。

  2. 専任技術者:許可を受けようとする業種ごとに、一定の資格または実務経験を持つ常勤の技術者が必要です。この技術者が、営業所に常勤していることが求められます。

  3. 財産的基礎または金銭的信用:一般建設業では500万円以上の自己資本または資金調達能力、特定建設業では資本金、純資産、流動比率などのより厳格な基準が設けられています。

  4. 誠実性:申請者、その役員、支配人等が請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。

  5. 欠格要件に該当しないこと:破産者で復権を得ない者、建設業法違反などで罰則を受け営業停止処分期間中の者などに該当しないことが必要です。

軽微な工事の厳密な判断基準

結論:建設業許可が不要な「軽微な建設工事」の判断は、単に請負代金500万円未満という基準だけではありません。

  • 契約書上の金額
  • 消費税の扱い

そして工事の分割請負の禁止など、複数の厳密な法的基準によって判断されます。

そのため、特に注意が必要です。

軽微な建設工事の範囲(軽微な建設工事)

建設業法第3条第1項ただし書に規定される「軽微な建設工事」の定義を正確に理解することが、無許可工事を回避する鍵です。

  • 金額の基準:前述の通り、一件の請負代金の額が500万円(税込)未満の建設工事、または建築一式工事にあっては1,500万円未満(税込)または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事が該当します。

  • 消費税の取り扱い:請負代金の額には、原則として消費税および地方消費税の額を含みます。この「税込み」で500万円以上になるかどうかが判断の分かれ目です。

  • 軽微な工事の注意点:請負代金が500万円未満であっても、その工事が「解体工事」に該当する場合、建設業許可とは別に、建設リサイクル法に基づく登録や届出が別途必要となる場合があるため、他の法令との関係も確認する必要があります。

軽微な工事を分割する行為の禁止

軽微な建設工事の基準を意図的に回避するために工事を分割する行為は、建設業法によって厳しく禁止されています。

  • 分割請負の禁止:本来は500万円以上の工事であるにもかかわらず、許可を逃れる目的で、請負契約を複数に分割して500万円未満と見せかける行為は違法です(建設業法第28条第3項)。

  • 判断基準の総合性:この「分割請負」かどうかの判断は、契約書が複数あるか否かだけでなく、工事の場所、密接な関連性、請負契約の時期の近接性などを総合的に見て判断されます。例えば、一つの建物における内装工事を、300万円と300万円に分けて請け負った場合、実質的に同一の工事とみなされ、500万円以上の工事として無許可工事の対象となるリスクがあります。

  • 請負契約の総額で判断:請負契約が2段階以上であっても、一つの完成した建設工事として機能する場合、その全体の総額で500万円の基準を超えるかどうかを判断するのが行政庁の一般的な見解です。

29種類の工事と付帯工事の区分

結論:建設業許可の29種類の業種区分は、工事を適正に行うための専門性を担保するものです。

それぞれの工事定義を理解し、主たる工事に付随する「附帯工事」の範囲を正しく適用することが、無許可工事を防ぐための専門的な知識となります。

一式工事と専門工事の厳格な区分

29種類の建設工事は、土木一式工事、建築一式工事の「一式工事」2種と、「専門工事」27種に分類されます。

それぞれの許可を持つ業者が請け負える範囲が明確に定められています。

  • 一式工事の定義:一式工事の許可は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を建設する工事を指し、自ら個別の専門工事を行うことを必ずしも意味しません。多くの専門工事を元請として一括して請け負う場合に必要とされます。

  • 専門工事の定義:専門工事は、特定の専門技術をもって行う工事を指します。例えば、電気工事の許可を持たない業者が、電気工事以外の許可を持つ業種の一式工事を請け負った場合でも、その電気工事の部分のみを自ら施工する場合は、電気工事の許可が必要です。

  • 許可の重複取得の必要性:建設業者は、自社が常時請け負う可能性のあるすべての専門工事について、許可を取得しておくことが理想的であり、事業拡大に応じて業種追加を行うことが推奨されます。

附帯工事の判断と適正な請負

建設業者が許可を受けていない業種の工事を請け負える例外規定が「附帯工事」です。

  • 附帯工事の定義:建設業法第4条第1項には、許可を受けた建設工事に附帯する他の建設工事は、その許可を受けた業種に含まれる旨が規定されています。これは、主たる工事を行う上で、技術的・物理的に一体不可分な従たる工事を指します。

  • 判断基準の具体例:例えば、内装仕上工事を行う業者が、その工事に伴って発生する軽微な電気配線工事や管工事を請け負う場合、それらは内装仕上工事の「附帯工事」として認められる可能性があります。しかし、主たる工事と比べて、附帯工事の規模が著しく大きい場合は、附帯工事とは認められません。

  • 誤判断のリスク:附帯工事の範囲を拡大解釈し、本来は許可が必要な工事を無許可で行うことは、建設業法違反(無許可営業)となる最も多い原因の一つです。判断に迷う場合は、事前に専門行政書士や行政庁に相談することが必須です。

無許可工事の罰則と回避戦略

結論:建設業許可が必要な工事を無許可で行った場合、個人だけでなく法人に対しても重い罰則(懲役・罰金)が科される可能性があります。

このような違法状態を回避するためには、工事請負契約前に必ず許可の要否を判断する厳格なチェック体制が必要です。

無許可営業の罰則と社会的制裁

建設業法に違反して無許可で営業を行った場合の罰則は非常に厳しく、事業継続に致命的な影響を与えます。

  • 法的な罰則:建設業法第58条により、無許可で建設業を営んだ者には、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」が科されます。また、法人に対しても、両罰規定により罰金刑が科される可能性があります。

  • 社会的信用度の喪失:無許可営業が判明した場合、建設業者としての社会的信用度は完全に失墜し、元請業者や発注者からの信頼を失い、金融機関との取引にも大きな影響を与えます。

  • 許可の再取得の困難さ:建設業法違反による罰則を受けた場合、その事実は欠格要件に該当し、一定期間(通常5年間)、建設業許可の再取得が不可能となります。これにより、事業の継続自体が困難となります。

許可が不要な工事との複合的な請負

許可が不要な軽微な工事と、許可が必要な工事を同時に請け負う場合の判断にも、厳密な注意が必要です。

  • 混在請負の注意点:請負契約を複数締結する場合でも、実態として一つの建設工事と見なされる場合、その総額が500万円以上であれば、許可が必要となります。個別の工事が500万円未満であっても、合計額が基準を超える場合は無許可工事となるリスクがあります。

  • 回避戦略としての専門家活用:無許可工事のリスクをゼロにするためには、自社が行う工事内容を常に「建設工事の定義」「29種類の業種区分」「軽微な建設工事の基準」「附帯工事の範囲」という4つの法的フィルターを通してチェックする体制が必要です。このチェック体制の構築と、個別の工事判断について、建設業許可専門の行政書士に依頼することが、最も確実な回避戦略です。

地域別審査基準と行政書士の役割

結論:建設業許可の審査は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県といった各行政庁(知事許可の場合)によって、書類の求め方や細部の判断基準に独自のローカルルールが存在します。

そのため、地域特化の専門家に依頼することが、確実な許可取得と法令遵守を実現します。

関東4都県のローカルルールと対応

知事許可の審査を行う東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の各行政庁は、特に「建設工事の定義」や「実務経験の証明」に関して、独自の厳しい審査基準を持つ場合があります。

  • 東京都都市整備局:建設工事の実態把握に厳格であり、特に「軽微な建設工事」の分割請負がないか、請負契約書等の書類を詳細に確認する傾向があります。

  • 神奈川県・埼玉県・千葉県:専任技術者の実務経験証明において、過去に行った建設工事の内容と、その工事がどの「業種」に該当するかを厳密に照合するケースが多く、定義の解釈に誤りがないか細かくチェックされます。

  • ローカルルールへの対応:これらの地域特有の審査傾向を熟知している行政書士に依頼することで、事前に適切な書類を揃え、補正指示による許可の遅延を防ぐことが可能となります。

建設業許可の知識と権威の提供

当事務所は、建設業許可の専門家として、複雑な「建設工事の定義」に関する知識、解決策、そして権威ある判断を提供します。

  • 法令遵守の体制構築支援:建設業許可の取得支援だけでなく、許可取得後も、御社が法令を遵守し続けるための体制(変更届の確実な提出、工事契約書の内容チェックなど)の構築を継続的に支援します。

  • 事業拡大の戦略支援:建設工事の定義や業種区分を正確に理解することで、本来は許可が必要であったにもかかわらず請け負えていなかった工事を明確にし、業種追加などによる合法的な事業拡大戦略を提案します。

  • トータルサポート:建設業法に精通した専門行政書士が、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアの建設業者様に対し、新規取得から更新、M&Aに伴う事業承継、そして経審・入札参加資格申請に至るまで、建設業許可に関するすべての手続きをトータルでサポートします。

サイト外リンク

  1. 国土交通省:建設業法の概要と関連法令

佐藤栄作行政書士事務所 | 公開日:2025.11.20 20:15 
更新日:2025.11.21 19:03

この記事を書いた人

sato-eisaku