建設業許可 個人事業主の法人成り完全ガイド:手続き・費用・メリットを専門家が解説

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建設業許可を取得している個人事業主が法人成り(法人化)を行う場合、建設業法上は「個人事業の廃業」と「新規法人による新規許可申請」を同時に行う必要があります。

これは、個人と法人が法律上、別個の事業主体(別人格)とみなされるためです。

しかし、個人時代の経営実績や技術者経験は法人に引き継ぐことが可能です。

この承継手続きが法人成りの最大のポイントとなります。

当事務所は、東京、埼玉、千葉、神奈川エリアに特化し、この複雑な法人成り手続きをスムーズかつ確実にサポートします。

法人成りのメリットと税金

結論:建設業許可を持つ個人事業主が法人化するメリットは、

  • 主に税制面
  • 社会的信用度

そして事業継続性の3点に集約されますが、社会保険の加入義務化などデメリットも伴います。

法人化による社会的なメリット

法人化は、事業規模の拡大と取引の安定化を目指す建設業者にとって不可欠なステップです。

  • 信用度の向上:法人、特に株式会社は、個人事業主と比べて社会的な信用度が高いと一般的に認識されています。これにより、元請業者や金融機関との取引、公共工事の入札参加資格の取得などが有利に進めやすくなります。

  • 契約の継続性:法人は事業主の死亡や引退に影響されず、半永久的に事業を継続できます。これにより、長期的な建設工事の請負や、事業承継が容易になります。

  • 有限責任:原則として、法人の債務(借入金など)は出資額を限度とする「有限責任」となるため、個人事業主のような無限責任から解放され、経営リスクを限定することができます。

税制と社会保険のメリット・デメリット

税金と社会保険は、法人成りによる最も大きな変化点であり、事前のシミュレーションが不可欠です。

  • 税制面のメリット:個人事業主の所得税は累進課税であり、利益が増えるほど税率が高くなります。法人税は一定額を超えると所得税の最高税率より低くなるため、年間利益が800万円を超えてくるような場合、一般的に法人税のほうが節税効果が高くなります。また、役員報酬として給与所得控除を利用できる点もメリットです。

  • 税制面のデメリット:法人住民税の均等割は、赤字であっても毎年約7万円程度が発生するため、利益が少ない場合は個人事業主よりも税負担が増える可能性があります。

  • 社会保険の義務化:法人化すると、原則として厚生年金保険と健康保険(協会けんぽ等)への加入が義務付けられます。社会保険料の会社負担分が発生するため、人件費は増加しますが、従業員や役員の福利厚生の充実につながります。

  • 社会保険の個人事業主との違い:個人事業主の場合は、国民健康保険と国民年金への加入が基本でしたが、法人化により厚生年金等へ移行します。これは従業員の採用において、企業としての信頼性を示す重要なポイントとなります。

許可承継と手続きの流れ

結論:建設業許可の法人成り手続きは、「個人許可の廃業届」と「法人による新規許可申請」を同時に行います。

個人時代の経営実績を法人へ引き継ぐことが鍵となります。

許可の引き継ぎと新規申請

建設業法では、法人成りは「許可の承継」ではありません。

あくまで新規申請として扱われます。

  • 廃業届の提出:個人事業主の事業を廃止した日から30日以内に、管轄の行政庁へ廃業届(様式第22号の3)を提出しなければなりません。

  • 新規申請の特例:法人による建設業許可の新規申請では、個人事業主時代の経営経験(経営業務の管理責任者としての経験)や、実務経験(専任技術者としての経験)を、申請法人の経験として引き継ぐことが認められています。これにより、新規法人でもすぐに許可要件を満たすことが可能となります。

  • 経験証明の特例:個人事業主本人や、個人事業主時代に常勤していた従業員が、そのまま法人の役員や専任技術者となる場合に、その個人時代の経験を証明する書類(工事請負契約書など)が審査の際に活用されます。

個人と法人の要件比較

法人成りでは、個人事業主の要件から法人の要件への読み替えが必要となります。

要件項目 個人事業主の許可 法人の許可
経営業務の管理責任者(経管) 事業主本人 常勤の役員
専任技術者 事業主本人または従業員 役員または従業員
財産的基礎 事業主個人の残高証明書 法人の資本金、残高証明書
欠格要件の確認対象 事業主本人 役員全員、支配人
許可の有効期間 5年間(個人から法人へは引き継がれない) 5年間

登記と行政手続きの連携

法人成りは、建設業許可手続きだけではありません。

法務局での法人登記、税務署への各種届出が伴います。

  • 法人登記:法務局で会社設立登記を行い、法人としての存在を確立します。この登記簿謄本(登記事項証明書)が、建設業許可申請の必須書類となります。

  • 税務署等への届出:個人事業の廃業届、法人の設立届出書、青色申告の承認申請書などを税務署や都道府県税事務所へ提出します。これらの税務手続きと建設業許可申請をスムーズに連携させることが重要です。

法人成りにかかる費用

結論:建設業許可の法人成りにかかる費用は、主に

  • 「法人設立費用」
  • 「法定手数料」
  • 「行政書士・司法書士・税理士への報酬」

の3つです。

法定費用と実費

法人を設立し、建設業許可を新規申請するために必要な実費です。

  • 法人設立費用:株式会社の場合、登録免許税(資本金の0.7%または最低15万円)、定款の認証手数料(約5万円)、印紙代(電子定款の場合は不要)など、合計で約20万円から30万円程度の費用が発生します。

  • 建設業許可の申請手数料:法人による新規許可申請として、知事許可であれば9万円、大臣許可であれば15万円の法定手数料(収入印紙または収入証紙)が必要です。

専門家への報酬と相場

法人成りでは、法務(登記)、税務、許認可(建設業許可)の3つの専門分野が関係します。

複数の専門家への依頼が一般的です。

  • 建設業許可行政書士報酬:個人事業主の廃業届作成、法人による新規許可申請書類の作成・提出代行、個人時代の経験証明サポートを含め、一般的に20万円から40万円程度が相場です。個人事業主時代の実績が明確で、書類収集が容易な場合は報酬が抑えられる傾向があります。

  • 司法書士報酬:法人設立登記手続きの代行費用として、一般的に5万円から10万円程度が別途発生します。

  • 税理士報酬:税務署への各種届出代行、税務相談、設立後の顧問契約費用などが別途発生します。

地域特化の最適な進め方

結論:東京、埼玉、千葉、神奈川の行政庁の実情に合わせた最適な手続きの進め方を選択し、事業中断のリスクを避けることが重要です。

関東4都県の審査傾向

知事許可を管轄する各都県の行政庁は、特に個人から法人への「経営経験の承継」の審査を厳格に行う傾向があります。

  • 東京都:個人から法人への引き継ぎの際、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者が「常勤」であることを証明する資料(健康保険証の写し、給与台帳など)の確認が非常に厳格です。

  • 神奈川県・埼玉県・千葉県:個人事業主の「廃業届」と法人による「新規申請」のタイミングや提出窓口、書類の記載方法について、各県独自の細かなルール(ローカルルール)が存在する場合があります。これらの違いを把握していないと、補正指示が多くなり、許可取得が遅れる原因となります。

  • 専門家による連携:当事務所は、建設業許可の専門行政書士として、司法書士や税理士とも連携し、お客様が手間なく法人成り手続きを一本化できる体制を整えています。

法人成り後の継続的なサポート

法人成りはゴールではなく、事業拡大のスタート地点です。

許可取得後も継続的なサポートが重要です。

  • 経審を見据えた財務指導:法人設立後の決算では、経営事項審査(経審)を見据えた財務諸表の作成が重要となります。税理士と連携し、許可を維持しつつ有利な経審評点を得られるような財務戦略を提案します。

  • 建設業許可の変更届:法人化後は、役員の変更、営業所の移転、資本金の増減など、法人ならではの変更事項が発生しやすくなります。これらが発生した場合、30日以内または事業年度終了後に変更届の提出義務が生じるため、継続的なサポートが必要です。

よくある疑問と解決策

結論:個人事業主が抱く法人成りに関する

  • 「許可の効力」
  • 「手続き期間」
  • 「費用の総額」

などの疑問を解決します。

許可の効力と手続き期間

個人事業主の許可の効力は、法人成りによってどうなるのかという疑問が多く寄せられます。

  • 許可の効力は消滅:個人事業主として取得した建設業許可の効力は、廃業届の提出により完全に消滅します。法人としての許可が下りるまでは、500万円以上の建設工事を請け負うことは法律上できません。

  • 手続き期間:法人設立から建設業許可の取得完了までは、法務局での登記期間(約1〜2週間)と行政庁での新規許可審査期間(知事許可で約30日~45日)を合わせて、通常1.5ヶ月から3ヶ月程度を見込む必要があります。

  • 事業中断リスクの回避:建設業許可の専門家は、個人事業の廃業届と法人による新規申請を同時期に提出し、事業中断期間を最小限に抑えるようスケジュールを組みます。

個人事業主が経管要件をどう引き継ぐか

個人事業主本人が法人化後も引き続き経営を担う場合、経営業務の管理責任者(経管)の要件はクリアできます。

  • 経験年数の証明:個人事業主本人の建設業経営経験は、そのまま法人の経管としての経験年数に引き継がれます。個人時代の確定申告書や許可通知書などが、その証明書類として有効活用されます。

  • 役員としての常勤性:法人設立後は、常勤の取締役などの役員として登記され、引き続き経営に携わることが必要です。

行政書士への依頼がおすすめな理由

結論:建設業許可の法人成りは、法務、税務、許認可が複合的に絡みます。

複合的な知識を持つ行政書士への依頼が最も安全かつ確実です。

失敗しない法人成りのためのサポート

法人成り手続きは、単純な書類作成だけではありません。

  • 個人から法人への資産、契約の移行
  • 従業員の雇用保険や健康保険の手続き

など、多岐にわたります。

  • 複数専門家の一本化窓口:当事務所は、建設業許可専門の行政書士として、法人成りにおける司法書士や税理士との連携を一本化し、お客様の手間を大幅に削減します。

  • 許可要件の確実な充足:個人事業主時代の実績を最大限に生かし、法人による新規許可申請の要件(特に経管、専任技術者、財産的基礎)を確実に満たすよう書類を作成します。

トータルコストの最適化

行政書士への報酬が発生しても、その費用対効果は非常に高いです。

  • 無駄な費用の削減:不備による許可の遅延や、税務上のミスを防ぎ、将来的な法人税・所得税の節税対策を見据えた適切な法人設立をアドバイスします。

  • 時間の節約:お客様が煩雑な手続きに費やす時間を本業に集中させ、事業拡大を加速させることができます。

佐藤栄作行政書士事務所 | 公開日:2025.11.20 18:45 
更新日:2025.11.20 19:53

この記事を書いた人

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