建設業許可 決算変更届の完全ガイド:期限・書類・書き方を徹底解説

建設業許可を取得している全ての建設業者は、建設業法第11条に基づき、事業年度終了後4か月以内に決算変更届(正式名称:事業年度終了報告書、様式第22号の2)を管轄の行政庁へ提出する義務があります。
この届出は、許可の有効期間中毎年必ず行わなければならない年次報告です。
更新や業種追加、経営事項審査(経審)の前提となる重要な手続きです。
未提出や不備があると、許可の更新ができなくなるほか、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
今回の記事は、この重要な届出について、正確な手続きの流れと必要な知識を、東京・埼玉・千葉・神奈川のローカルルールも含めて網羅的に解説します。
届出の期限と未提出のリスク
結論:決算変更届の提出期限は、法人の事業年度が終了した後、4か月以内と定められています。例:3月末決算の場合は7月末日が期限です。
提出期限の厳守と計算方法
決算変更届の提出期限は、税務申告の期限とは異なります。
「事業年度終了後4か月以内」が建設業法の規定です。
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提出期限の起算日:法人であれば、定款で定められた事業年度の末日の翌日から4か月目の前日までが提出期限となります。個人事業主の場合は、毎年12月31日が事業年度の末日となるため、翌年4月30日が提出期限です。
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土日祝日の対応:期限が土日祝日と重なった場合、その翌日の平日が提出期限となる場合が多いですが、管轄行政庁によって対応が異なる場合があるため、事前に確認しておく必要があります。
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猶予措置の有無:税務申告では期限の延長が認められる場合もありますが、建設業法上の決算変更届は、原則としてこの期限を超えることは認められていません。
未提出・遅延による重大な影響
決算変更届の提出を怠ると、建設業者の事業継続に重大な影響を及ぼします。
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更新申請の不受理:許可の有効期限が満了して更新申請を行う際、過去5年間の決算変更届が全て提出されていないと、申請は受理されません。更新期間間際に未提出が発覚すると、許可が失効するリスクが生じます。
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経営事項審査の受審不可:公共工事の入札に必要な経審は、直前の事業年度の決算変更届が提出されていることが前提です。未提出であれば、経審を受けることができず、入札参加資格を失います。
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罰則の適用:建設業法の規定に違反して届出を怠った場合は、行政指導のほか、罰則(過料)の対象となる可能性もあります。
提出書類の全リストと準備
結論:決算変更届に添付する書類は多岐にわたります。
税務申告書類の写しと、建設業特有の様式(工事経歴書、財務諸表など)の両方を準備する必要があります。
財務状況を報告する必須書類
決算変更届の核となるのは、その事業年度の財務状況を報告する各種書類です。
これらの書類は、税理士が作成した税務申告書類と一致している必要があります。
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様式第22号の2:事業年度終了報告書(表紙)です。変更事項の有無や決算日などの概要を記載します。
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様式第15号(工事経歴書):その事業年度に完成した全ての建設工事の経歴を記載します。工事名、請負金額、工期、発注者名などを記載します。
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様式第16号(損益計算書)、様式第17号(貸借対照表):建設業会計の原則に従って作成します。特に、完成工事高、完成工事原価などの項目を正確に記載する必要があります。
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株主資本等変動計算書・注記表:法人の場合、これらも添付が必要です。
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附属明細表:特定建設業の場合は特に重要な添付書類となります。
経営組織や技術者に関する様式
財務状況のほかに、経営組織や技術者の状況に変更がないかを再度確認しましょう。
報告する必要があります。
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様式第11号(役員等の一覧表):役員や使用人(支配人、支店長など)の氏名や役職を一覧で報告します。変更がない場合も提出が必要です。
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様式第7号(専任技術者の一覧表):各営業所に配置されている専任技術者の氏名と資格を報告します。
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事業報告書:会社法に基づき、法人が作成した事業報告書の写しも添付します。
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納税証明書:法人事業税または個人事業税の納税証明書の写し(直前の事業年度のもの)を提出します。
正しい書き方と作成のポイント
結論:決算変更届の様式は、税務申告書と建設業法の要件を正しくリンクさせることが重要です。
特に「完成工事高」の記載には注意が必要です。
財務諸表作成時の建設業会計の基本
建設業特有の様式(様式第16号、17号)を作成する際は、一般の税務会計と異なる「建設業会計」の原則に従う必要があります。
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科目の振り分け:税務申告書の科目を、建設業会計の「完成工事高」「兼業事業売上高」「完成工事原価」などの特有の科目に正しく振り分けて記載します。
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勘定科目の内訳:特に、貸借対照表の「流動資産」や「固定負債」などの内訳は、経審の評点に直接影響するため、正確な記載が求められます。
工事経歴書(様式第15号)の記載要領
工事経歴書は、その事業年度に請け負った建設工事の実績を証明する書類です。
次の点に注意して作成します。
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記載対象:元請・下請を問わず、完成した全ての建設工事を記載します。ただし、軽微な工事(500万円未満の工事など)は、一部省略が可能な場合もあります。
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工事の分類:工事を許可を受けている業種ごとに分類して記載します。例:土木一式、建築一式、とび・土工など。
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添付資料の整備:記載した工事が実在することを証明するため、請負契約書や請求書の控えを整理しておく必要があります(提出は不要な場合が多いが、行政庁の求めに応じて提出できるように準備)。
提出先と行政庁のローカルルール
結論:決算変更届の提出先は、許可を受けた行政庁です。
知事許可の場合は各都県の建設業担当課へ提出します。
知事許可と大臣許可での提出先の違い
建設業許可の種類によって、提出先が異なります。
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知事許可の場合:主たる営業所が所在する都道府県の建設業許可担当課(例:東京都都市整備局、神奈川県県土整備局など)へ提出します。提出方法は、窓口持参または郵送が一般的です。
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大臣許可の場合:主たる営業所を管轄する地方整備局へ提出します。
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提出部数:通常、正本と副本(控え)の2部を提出します。副本には受付印を押してもらい、自社で大切に保管します。
東京・埼玉・千葉・神奈川の独自ルール
関東エリアの各行政庁は、提出様式や添付書類に独自のルール(ローカルルール)を設けていることがあります。
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東京都:様式の記載に関する指導が厳格であり、特に財務諸表の科目の振り分けに関して細かい指示がある場合があります。
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千葉県・埼玉県・神奈川県:郵送による受付を許可している場合もありますが、不備があった際の対応を考慮すると、窓口持参の方が確実な場合も多いです。最新の受付要領を確認する必要があります。
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行政書士の役割:地域に特化した行政書士は、これらのローカルルールを把握しているため、不備なくスムーズな提出を実現できます。
経審への活用と財産的基礎 (15文字)
結論:決算変更届は、公共工事の入札に必要な経営事項審査(経審)を受審するための出発点となる重要な書類です。
決算変更届と経営事項審査の関係(建設業 経審 決算変更届)
経審は、建設業者の経営規模や技術力を数値化して評価する審査です。
その基礎データとなるのが提出された決算変更届です。
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経審の受審要件:直前1期の決算変更届が行政庁に提出されていることが経審を受けるための絶対条件です。
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評点への影響:決算変更届に記載される完成工事高、自己資本額、負債額などの財務諸表の数値は、そのまま経審の評点(P点)の計算に使用されます。適正な建設業会計に基づき、有利な評点を得られるように作成することが重要です。
特定建設業の財産的基礎のチェック
特定建設業の許可を受けている建設業者は、決算変更届の提出に際して、「財産的基礎」の要件(資本金、欠損比率、流動比率など)を継続して満たしているかを毎年確認されます。
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様式第17号の2(貸借対照表の要旨):特定建設業の場合は、この様式に基づき、財産状況を詳細に報告します。
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要件を満たせない場合:もし財産的基礎の要件を満たせなくなった場合は、行政庁から指導を受けることとなり、改善が見られない場合は、許可の取り消しや特定許可の廃止のリスクも発生します。
行政書士に依頼するメリットと報酬
結論:煩雑な決算変更届は、建設業専門の行政書士に依頼することで、確実な期限内提出と経審を見据えた最適な書類作成が可能となります。
行政書士への依頼のメリット
決算変更届は経理担当者の方でも作成は可能ですが、行政書士に依頼することで得られる専門的なメリットは大きいです。
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税理士との連携:行政書士と税理士が連携して作業を進めることで、税務申告書類と建設業法の様式間の数字の整合性を完璧に保ちます。
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記載のミス防止:特に、建設業会計への振り分けや、工事経歴書の記載ミスを防ぎます。ミスが発覚すると、受付窓口での訂正や再提出に多大な時間を要します。
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経審を見据えた最適化:将来の経審を考慮して、提出様式が評点に有利になるような勘定科目の確認と記載をサポートします。
行政書士報酬の相場と費用対効果
決算変更届の行政書士報酬は、提出する部数や建設業会計の複雑さによって異なります。
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報酬の目安:一般的に、知事許可1期分の決算変更届で3万円から7万円程度が相場です。ただし、未提出分を遡って作成する場合は、その年数に応じて報酬額が増加します。
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費用対効果:報酬は発生しますが、自社の担当者が煩雑な書類作成に費やす時間と労力、そして不備による許可更新拒否や経審受審不可のリスクを考慮すると、専門家への依頼は極めて有効な投資と言えます。
よくある疑問と提出前のチェック
結論:決算変更届は毎年の手続きであるため、よくある疑問を解決します。
提出前のチェックリストで不備を確実に防ぎます。
個人事業主の場合の提出と納税証明書
個人事業主の建設業者も、法人と同様に決算変更届の提出が義務付けられています。
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提出書類の違い:個人事業主の場合は、株主資本等変動計算書や事業報告書は不要ですが、様式第20号(個人の財務諸表)や様式第21号(事業主借勘定・事業主貸勘定の内訳)などの個人特有の様式を使用します。
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納税証明書:個人の場合は、所得税の納税証明書(その1またはその2)や個人事業税の納税証明書を添付します。
提出前に確認すべきチェックリスト
行政庁への提出前には、以下の項目を必ず確認して、一発で受理されるように準備します。
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全ての様式に日付、商号、代表者名の記載漏れはないか。
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法人の場合は、会社実印(代表者印)の押印漏れはないか。
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工事経歴書の完成工事高が、財務諸表の完成工事高の数値と一致しているか。
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納税証明書は直前の事業年度のものを添付しているか。
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提出部数は正本と副本(控え)の2部を用意しているか。
トータルサポートと解決策
結論:建設業許可の専門行政書士に依頼して、決算変更届の提出と今後の更新・経審をトータルでサポートさせていただくことが最も確実な解決策です。
当事務所が提供する解決サービス
当事務所は、東京・埼玉・千葉・神奈川の建設業者様に特化して、決算変更届の提出を確実にサポートします。
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記帳代行との連携:税理士と連携して、記帳代行から決算変更届の作成までを円滑に進めることが可能です。
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過去分の遡及提出支援:未提出の決算変更届が過去に残っている場合も、迅速に遡って書類を作成し、更新に向けての基盤を整えます。
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経審を見据えた継続的な指導:単に届出を出すだけでなく、今後の公共工事の受注に有利な経審を見据えた財務的な指導も提供します。
お問い合わせから提出完了までの流れ
行政書士への依頼は、以下の簡単なステップで進められます。
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お問い合わせ:電話またはサイトのフォームより、決算変更届の依頼をお願いします。
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ヒアリングと資料収集:過去の許可書類、最新の税務申告書類、工事経歴などを、お客様にご用意いただきお預かりします。
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書類作成と最終確認:行政書士が全ての様式を作成し、お客様に最終確認と押印を依頼します。
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行政庁への提出代行:行政書士が管轄の行政庁へ書類を提出し、副本に受付印をもらいます。
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完了報告:受付印が押された副本をお客様に納品して完了です。
佐藤栄作行政書士事務所 |
公開日:2025.11.20 07:15
更新日:2025.11.20 18:30



